研究課題/領域番号 |
19K14069
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 (2021-2023) 都留文科大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
市川 桂 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60754546)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 評価 / 学力 / 多様性 / デンマーク / 口頭試験 / 数学 |
研究開始時の研究の概要 |
デンマークでは、9年生対象の義務教育修了試験に口頭試験を含めて実施している。子どもが義務教育の中で身につけるべき力として、他者とのコミュニケーションを通じて自らの考えを深めていくことを掲げ、解答がひとつではない課題に取り組む能力を測定するという実践は、これからの社会における学力テストの在り方をどのように考えるのかということについての指針となり得る。本研究は、デンマークにおける学力テストについて(1)教育の目的、(2)教授学習の方法と学習成果の測定方法としての学力テスト、(3)教員の役割の3つの側面から実態を解明し、学力観と評価観について考察を行うものである。
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研究実績の概要 |
研究実績としては、国内学会で1件、国際学会で2件の口頭発表を行うとともに、国際共著論文1本が学術誌に掲載された。 以上に加えて、本研究の総まとめとして、東信堂から単著『デンマークの多様性教育』を出版した。この本は、多様性教育と聞いて、多くの人々がイメージするものとは異なる視点から執筆した。従来の多様性教育の研究で扱われてきたのは、エスニシティや宗教、ジェンダーなどで、学力という側面から多様性を論じたものは非常に限られている。 子どもたち一人ひとりが主体性をもって多様な人々と協働して学ぶことを目指すときに、どのように学力をとらえ、それを評価するのか。主体性と協働性とともに多様性が学力の三要素のひとつとなった現在の日本にとって、デンマークの教育と評価の実践は示唆に富んでいると考えた。 この本は、十分な研究遂行ができなかったコロナ禍の3年をはさんだ5年間の研究成果をまとめたものである。都留文科大学で担当した留学生対象の授業中に、デンマークでは口頭試験が重視されていることを留学生から聞いて興味を持ち、そこではどのような問題が出されているのか、誰が作問しているのか、誰が採点するのか―と次々にわいてきた疑問に対する答えを求めて研究を行ってきた。そのため、個々の研究対象に対する考察は、今後後継研究を通じて深く掘り下げていく必要がある。特に、本研究に関連する思想・哲学や歴史については、原典をあたりながら理解を深めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果を書籍化することができたからである。 この本では、日本よりも国土も人口も小さな国・デンマークの教育に注目して、多様性を認め育むことを可能にしている学力と評価のあり方を考察している。九州くらいの面積(グリーンランドやフェロー諸島を除く)に東京都の半分くらいの人々が暮らしているデンマークは、ドイツなどの強国に囲まれながらも、独自の言語(デンマーク語)を維持し、家具などのデザイン産業で世界をリードしている。このことから、デンマークについて研究することは、これから人口縮減期を迎える日本が、中国やロシアの隣人として独立を維持しながら生き残る道を模索するときの好事例となり得ると考えた。 本研究を書籍化することによって、広く社会に研究成果を発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、既述のとおり、個々の研究対象に対する考察を行っていく必要があると考えている。特に、本研究に関連する思想・哲学や歴史については、原典をあたりながら理解を深めなければならない。また、本研究の後継となる基盤(C)の研究を遂行していく予定である。 科研費の補助期間は一年延長してあるが、これは出版および本の納品が年度内にできない可能性を考えての措置であった。令和6年度は、令和5年度中に出版した本を献本し、本書を用いた研究会を開催予定である。
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