研究課題/領域番号 |
19K14081
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 高田短期大学 (2021-2022) 愛知江南短期大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
亀澤 朋恵 高田短期大学, 子ども学科, 講師 (60736239)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 無試験検定 / 教育史 / 教員養成 / 中等教員 / 美術教育 / 教員養成史 / 美術教育史 / 文部省教員検定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、無試験検定研究において未検討であった「図画科」の事例を明らかにすることにより、無試験検定研究に知見を寄与し、ひいては戦前期中等教員養成の総体的把握につながるものである。 また、教員養成に着目することによって、戦前期の中等図画教育の歴史的特質解明への知見を与え得るものでもある。戦前期の中等図画教育の実態において、実技という学科目の特質から、個々の図画教員の絵画修行歴が実践に影響を及ぼしたとされている。とくに、教員の量的供給に大きく貢献した無試験検定制度の内実を検証することは、教員養成史研究にとどまらず、美術教育史研究においても教育史的展望を与えるものである。
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研究実績の概要 |
本研究で設定した六つの作業課題【①無試験検定「図画科」の枠組みの整理②各校の教員スタッフの履歴・業績③カリキュラム④生徒の学力⑤教育実習、実地教育⑥施設、設備】のうち、分析課題②④⑤に着手した。 無試験検定校の事例2校(a.京都市立絵画専門学校、b.女子美術専門学校)と無試験検定の許認可過程において重要な事例となるc.帝国美術学校の担当教員、教育課程の変遷等については学校史等の資料により大部分が明らかになっているが、昨年度の時点での現地調査の遅れが取り戻せず、公文書等による裏付けがとれていないものが残されたままになっている。三つの事例のうち、a.京都市立絵画専門学校に関連して、京都府の美術界、産業界に関する調査をおもに文献資料の収集と検討によって作業を進めている。外部の動向が、カリキュラムや教員など、教育界にどのような影響を及ぼしたのか、教授要目との比較など詳細に検討する必要があるが、分析については中途である。 これらの作業と並行して、戦前期の美術教育に関連する資料(『図画教育通信』)を継続して調査している。『図画教育通信』は、図画教員対象に発行された雑誌であり、取り扱われた内容が図画教員のキャリアに関するものが中心になっている点で、他の美術教育関係雑誌と比較して稀有な資料である。同通信は、山形寛(『日本美術教育誌』黎明書房、1967年)によって存在が明らかにされていたが所在が不明だったもので、調査の過程で偶然確認・収集できた。これらについては、資料紹介として目次一覧をまとめた。元々研究のための基礎資料として位置付け、作業の傍らでまとめていたものであるが、図画教育、とくに中等学校の実態について記された数少ない資料であるため、継続して調査・収集を進める。通信の記述内容は、当時の美術教育の思想や動向について示唆に富む内容であるが、詳細な検討は今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、研究期間の前半(2年間)は資料収集・調査、後半(2年間)は分析を中心に作業を進める予定であったが、新型コロナウィルス感染症対策のための緊急事態宣言や行動制限により、県外移動や現地調査が遅延している。そのため、事例検討に必要な現地調査と、それに付随する分析作業が滞っている。2021年度から22年度にかけ、前半2年間の作業を継続しながら後半期の作業に着手したが、年度内に終了できなかった。 事例検討の対象である京都市立絵画専門学校については、京都の美術関係の資料の収集と分析も同時に進めている状態である。分析課題④⑤について、22年度までに免許取得希望者(教員養成課程の受講者)の実態に関して、学校史や同窓会誌を検討したが手がかりがほとんどなく、京都の美術界、教育界関係の資料から検討している途中である。残りの事例検討の対象である女子美術専門学校と帝国美術学校については、分析課題②と関連し、今後の美術教育史を展望した上で、両校で教員を務めた人物研究の必要が生じてきた。まず、女子美術専門学校について、試験検定の合格者の9割超が男性だったという事実から、美術教育のジェンダーギャップや女性にとっての美術教育の意味を含めて、無試験検定に認定された事実について検討を要する学校である。職員録に試験検定「文検」の合格者と思われる「清水たつ」が確認できたが、彼女の履歴については不詳の部分が多く、有力な資料に関しては現在のところ展望がない。次に、帝国美術学校については、試験検定「文検」合格者であり、かつ高等教員検定(通称「高検」)初回合格者である「藤本仁平」が勤務していたことを確認した。履歴については出身校の学校史や彼の著作等から、戦前期の用器画教育に関する有力な人物であることが明らかになっており、中等図画教育の教員の資質や教育内容の検討をするにあたって、彼についての検討は不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は2021年度に設定した分析課題②④⑤を継続しつつ、(1)前年度までの作業の継続と補充を行う(2)研究の総括として、日本教育学会、教育史学会、大学美術教育学会等で研究発表または投稿を目指すとしたが、調査遅延のため作業を完了できず、延長の申請をおこなった。本年度はこれらの作業を継続しつつ、計画の見直しが必要と考える。3校の事例を検討対象としていたが、3校それぞれ作業課題のすべてを網羅して検討することが難しくなっており、これまでの作業で比較的進行できた事例に重点を置き、残念ながらあまり進展しなかった事例に関しては、今後の指針とすべく課題を整理しておきたい。具体的には、京都市立絵画専門学校の事例検討に重点化して作業を進めることとする。京都府の美術教育に関して、美術界、産業界の動向については美術行政に関する府会および市会史の記述、『京都府百年の資料』等に記載された事項が重要な手掛かりになると思われ、引き続き分析作業を継続する。 進捗の項で示したように、女子美術専門学校および帝国美術専門学校については、試験検定である「文検」と関連して、詳細な人物研究の必要が生じてきた。いずれも詳細を明らかにするには資料的な限界が多く、今期中の解明は困難である。そのため、こちらについても現時点で明らかになったことの要点の整理をし、今後の課題として提示しておきたい。
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