研究課題/領域番号 |
19K14136
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 白鴎大学 (2020-2023) 浜松学院大学 (2019) |
研究代表者 |
島埜内 恵 白鴎大学, 教育学部, 講師 (30805263)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 移民教育政策 / ELCO / 出身言語・文化教育 / 母語教育 / フランス / 共和国原理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、フランスと9か国の出身国との二国間協定を基盤として、1973年以降フランスの公立学校にて行われている「出身言語・文化教育(ELCO)」プログラムを分析の対象とする。フランスにおけるいわゆる移民教育施策のひとつとして、「フランスへの統合に資するか」という受入国側の視点から一方的に評価されることの多かったELCOプログラムについて、二国間協定という制度的基盤に着目しながら、9か国の出身国によるプログラムへの評価や、フランスと出身国との連携の実態等を明らかにする。このことを通して、国境を越えて移動する子どもの教育保障のひとつの方策として、受入国と出身国の二国間連携モデルを探る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、定住性に立脚するのではなく、多様かつ複雑な移動性を包摂しうる教育制度・政策の在り方を明らかにすることである。この目的を達成するために、フランスと9カ国の出身国との二国間協定を基盤として1973年から現在まで行われている「出身言語・文化教育(Enseignement des langues et des cultures d'origine:以下、ELCO)」プログラムを分析の対象とし、国境を越えて移動する子どもの教育保障のひとつの方策として、受入国と出身国の二国間連携モデルを探る。ELCOプログラムとは、フランスの公立学校で週に1回、主に課外の時間に実施されている各国の言語や文化の教育である。その授業を担うの は、同プログラムの対象である9カ国が採用、派遣、給与を負担する外国人教員(ELCO教員)である。 本年度は本研究上2回目の現地調査を実施した。現地調査では、関連する先行研究の収集とともに、「廃止」となったあとのELCOプログラムの後継プログラムに関して、イタリア総領事館の教育担当者に聞き取り調査を行った。具体的な聞き取り内容としては、「廃止」方針への評価や受け止めと、「廃止」後の後継プログラムの実態等を中心とした。 また、当初本年度を最終年度としていたこともあり、ELCOプログラムの相対化の一環として、欧州のレベルで移民の子どもを対象とした「母語」の教育がどのように行われてきたかを把握するために、Eurydiceの報告書を対象とした母語教育関連の記述の分析を行った。その結果、当初中心であった移民の受入国と出身国との間で締結される「二国間協定」を基盤としたかたちでの母語教育の実施が後景化し別の観点で母語教育が分類・分析されるようになったこと、母語教育が一般の教育課程における外国語教育との兼ね合いの中でとらえられるようになったこと等を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の調査対象として主として想定してきたのは、①大使館・領事館の教育関係者、②ELCO教員、③ELCOプログラムの受講者の保護者、④出身国にルーツをもつ人びとで組織する社会団体の四者である。この内、①と②(ただし、現役教員ではなく、元教員)は聞き取り調査の対象とできた一方、③と④の対象者への聞き取り調査は未実施である。この点が今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
当初2023年度を最終年度と予定していたが、申請の結果2024年度まで研究期間の延長が認められた。最終年度となる2024年度は、以下の3点を中心に研究を進める。 第一に、現地調査としては、上記①②の拡大を図るとともに③④の対象へもアプローチを行う。 第二に、この間の文献調査と聞き取り調査を通して、「出身言語・文化教育」を意味するELCOプログラムのうち、「出身文化」の教育内容・教育対象への検討が不十分である側面が浮き彫りとなった。「出身文化」はELCOプログラムに向けられてきた批判や否定的評価の一部をなすものでもある点もふまえ、「出身文化」の具体像を明らかにすることを目的として、学会発表を行う予定である。 第三に、研究の目的として設定した「定住性に立脚するのではなく、多様かつ複雑な移動性を包摂しうる教育制度・政策の在り方」について、本研究に関して取り組んできた論稿や学会発表等もふまえて考究する。
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