研究課題
若手研究
世界の5歳未満児の年間死亡数は560万人であり、その約半数に栄養不良が関係している。また開発途上国においては、大半の幼児に寄生虫感染が認められることから、寄生虫感染が原因となる栄養不良が報告されている。特に栄養不良の終末像とも言われる悪液質は、基礎疾患に関連した全身性代謝異常を示す病態であり、従来の栄養療法では改善が困難なため予防がより重要となる。近年、悪液質に至る発症メカニズムの解明が進展しているが、寄生虫感染が悪液質に至るとのエビデンスは未だ乏しい。本研究では、マラリアと住血吸虫症による悪液質の実態と発症メカニズムを解明することで、予防可能な疾病による死亡を減少させることを目指す。
本研究では、栄養不良の早期発見・治療を目指して、マラリアや住血吸虫症などの寄生虫疾患の流行地である西ケニア辺境地域において、学童を対象にi)栄養不良(低栄養)と、ii)その原因病原体の有病率の同定による実態調査と、iii)栄養不良の発症要因解明を目的として研究を推進している。i)低栄養の有病率については、これまで集積した栄養関連項目データ(2018年、2019年、2021年、各年約1000人)を使用して、既存のWHOによる栄養不良の評価と、新たな低栄養診断基準(Global Leadership Initiative on Malnutrition: GLIM)に基づく栄養不良の評価を進めている。これらは栄養関連項目として収集した個人の属性(年齢、性別、生年月日)、身体測定値等(身長、体重、体温、上腕二頭筋周囲径、ふくらはぎ周囲径、体脂肪率、握力、ヘモグロビン値)や各個人の寄生虫感染(マラリア、住血吸虫、土壌伝搬蠕虫)情報をもとに基礎的な記述統計として報告する。またii) とiii) については、低栄養の原因病原体を検出するために必要なプライマーの選定を終えており、現在は実験系確立に向けて準備中である。また昨年度は調査地域において収集した二次データをもとに、学童を対象として発育阻害と食事の質(食事の量とバランス)の関連を検討した。その結果、対象学童の15.0%(36/260)が発育阻害を示し、76.9%(200/260)が寄生虫(マンソン住血吸虫)に感染していた。また子どもの発育阻害と食事の質は関連する傾向が見られた(p for trend = 0.065)。本研究では学齢期の子どもの食事の質を評価するために、対象国の食事ピラミッドを活用したFood Pyramidスコア(FPスコア)による評価が有用であることを報告した(Kishino M. et al., Trop Med Health, 2024)。
4: 遅れている
昨年度はこれまでのデータのまとめと、新たな研究の展開に向けた準備に多くの時間を充当した。そのため、低栄養に関連する生体内遊離物質の検出が遅延しており、進捗を遅れていると評価した。
最終年度は、栄養不良の発症要因について統合的な解析を推進する。具体的には、対象学童の栄養と病原体感染の状況や生体内遊離物質の検出を進めるとともに、論文化を行う。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
PLoS neglected tropical diseases, 18(1)
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Trop Med Health
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120006987734