研究課題/領域番号 |
19K14203
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中川 篤 広島大学, 外国語教育研究センター, 助教 (90835498)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 当事者研究 / 関係性レジリエンス / 教員養成 / コミュニケーション能力 / 相互行為能力 / 関係性文化理論 / 教師の共同体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は教員の関係性レジリエンスを高めることを目的に,精神医学の手法である「当事者研究」を英語科教員へ適用するものである。初年度(2019年度)は文献調査を中心に関係性レジリエンスと当事者研究を理論的に結びつけ,続く年度のために理論的基盤の整理を行う。20年度には文献調査と半構造化面接を用いて「英語科教員のための当事者研究」のモデルを作成し,21年度は作成したモデルの実践・改良を行う。最終年度にはそれまでの総括を行い,国際学会で研究発表を行う。
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研究実績の概要 |
教員の離職が世界的な問題となっているが,日本では精神疾患による休職が特に多い。この状況を解決するには時間がかかるため,教員はこの問題と上手く付き合う方法を身につける必要がある。そこで重要なのが,逆境を糧に成長する力「レジリエンス」,特に他者との関係性を通じて育まれる「関係性レジリエンス」である。本研究は,精神福祉分野の「当事者研究」という対話的手法を用いて,教員の問題に共同体として対処する方法を理論的に探究するものである。 2023年度は,COVID-19の流行による行動制限がようやく緩和されたことを受け,教員養成課程において当事者研究を経験し,現在教員として勤務する研究協力者への追跡調査を行った。調査協力を依頼したA氏は,初年度の教員生活で精神的に追い詰められていたが,それでもインタビュー時点で教職にとどまり続けている。逆境を経験しながらも教職にとどまり続けることを選んだA氏の選択に,当事者研究の経験から得た学びが関わっているならば,それが活かされていると言っていいだろう。 分析の結果,研究協力者は担当する科目 (外国語科) の指導内容よりも,むしろ職場の人間関係や,勤務校全体・外国語科・他の外国語科教員の指導方針が一致していないことに困難を感じていることがわかった。また,自身で他の教員と共に当事者研究そのものを行うことはないが,当事者研究で学んだ「ユーモアを使って状況を俯瞰し,他者に援助要請を行う」ということは実践していることがわかった。 こうした実践は,A 氏の「断絶を経験した後に他者とのつながりを再構築し,他者に支援を求める能力」である関係性レジリエンスの発露であり,その結果として「教師が教鞭をとる日常的な世界において精神の均衡を保ち,コミットメントと主体性の感覚を維持する能力」である教員のレジリエンスが発揮されていることを表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の流行により,本来であれば3年次に実施する予定であったインタビューを最終年度に実施する運びとなった。最終年度である本年は,これまでの遅れを取り戻すべく精力的に研究を推進していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
教員養成課程において当事者研究を経験し,教員生活初年度で逆境を経験したにもかかわらず,教職を辞さなかった人物についてのデータは学会発表済みであるため,論文投稿予定である。また,教員養成課程において当事者研究を経験し,上述の人物とは逆に初年度で教職を辞した人物に対してもインタビューを実施済みであるため,その内容をまとめて学会発表を行い,論文にまとめる予定である。 本来は「英語科教員のための当事者研究」に関する講習を行う予定であったが,COVID-19の流行を受け,実際に集まることができなかったり,教員免許更新講習も取りやめになったため,データ収集が困難である。これについては,当事者研究を経験し,現在でも教職に留まっている人物数名に協力を依頼し,データの収集を行う予定である。
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