研究課題/領域番号 |
19K14256
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
富田 真紀 中央大学, 法学部, 特任教授 (20708044)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | グローバル市民育成 / 開発途上国 / 国際協力 / キャリア / キャリア教育 / 初年次教育 / 途上国の開発 / 異文化適応力 / 途上国・グローバル課題 / 測定ツール・アンケート / グローバル市民性 / グローバル教育 / 国際協力・開発 / グローバル課題・途上国問題 / グローバル教育と開発教育 / 短期海外派遣の効果 / 学内でのグローバル学習 / コンテンツと方法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は『高等教育でのグローバル市民育成において、内容と方法の両視点から効果的な学習活動を提案すること』である。具体的には、以下の手順で行う。 ① 文献調査、他大学での実践報告などを踏まえ、グローバルコンピテンシー測定アンケートを作成する。 ② グローバル課題や異文化理解等について学ぶ大学の授業や海外プログラム(大学主催、大学外主催共)参加者に対してアンケート調査を行う。 ③ ②の参加者の一部に対して、具体的な活動や学びに関する聞き取り調査を行う。 ④ ②と③の調査結果から、どのような学習活動がグローバルコンピテンシーの醸成に効果的か分析・検証し、研究成果を発表する。
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研究実績の概要 |
①研究活動で得た知見やスキルを取り込みながら、グローバル市民育成を目的として実施した学内での通年演習授業履修者20名にグローバルコンピテンシーと学びの振り返りについて、アンケートとインタビュー調査を行った。グローバル課題のグループ研究活動を行った高学年学生は、1)異文化理解と2)協働力の向上を強く認識していた。 ①ー1)海外との交流はなかったものの、学生はグローバル課題と深く向き合う過程で異文化理解の難しさを実感し、活動を通じた自身の異文化理解の深まりを具体的に言語化していた。大学生レベルでは、海外との直接的な交流や現場体験がなくても、知的活動によってある程度異文化理解・イメージを深められることがわかった。 ①ー2)課題の難しさから一人では到底できなかったと感じることを、自らの役割を考えつつもグループで頼りあって達成したという経験から、学生は論理的思考力に加えて協働力の向上と自身の成長を強く感じていた。 これらの結果から、知的学習活動の難易度に比例して、獲得される知識と汎用的なスキルは相乗的に影響しあい醸成されると推察された。更に、学生は習得したスキルや学びがキャリアを構築していく上で非常に有益だと感じていることがわかった。 ②フィールド調査や学生交流を伴う海外引率型研修をオンラインと現地訪問を併用して実施した。学生は、現地訪問の醍醐味である現場での感情の動き、観察、体感と講義から得た知見や知識を有機的に結び付けて学びを体系化することに苦労していた。 ③アフリカ研修の実現可能性を探るため、他大学のザンジバル研修に同行し学生の学びと変化の様子を観察した。アフリカも土地によっては現地研修先の選択股となりえ、文化的に馴染みが薄く生活適応が困難だからこそ、アジア以上に学びと成長を期待できる可能性があることがわかった。開発教育を通じたグローバル市民育成の有用性を定性的に確認できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学教育におけるグローバル市民育成実践モデルの開発:開発教育活用の可能性をテーマにした本研究では、学内での通常のグローバル関連の授業・学習活動と途上国での現地に行かなければ経験できない学習活動の両方から、学生がどのように意識や考え方、行動を変化・変容させていくかを追っていくことを想定をしていた。しかし、コロナの影響により過去3年間は予定していた途上国のプログラムの引率が中止となったため、現地研修を通した学生の意識や行動の変化という点でのデータ収集、調査については、当初予定のようには進んでいない。 一方で、学内での授業活動を通して学生の変容を見ることにおいては、多少想定していたより人数が少なかったものの、計画的に実施できている。さらに、渡航がかなわなかった分、学内でのオンラインを取り込んだ学習という研究開始当初には想定していなかった切り口からの研究、コロナという不測の事態への対応はある種の異文化適応と捉えることもできると考え、学生がコロナによる環境の変化をどのように捉え、変化していったかについても調査・研究を行った。また、グローバル市民育成の一環として研究開始時には盛り込んでいなかったキャリア設計という視点をアンケートやインタビューの調査の中に新たに盛り込むことで研究の幅を広げた。 今年度は、ほぼコロナ以前の渡航が可能になり、情報収集のみならず学生引率による学生の現地での体験を通した意識や行動の変化を近くで観察しながら各種調査を行うことが可能となると考えられるため、ある程度現地研修部分の調査のキャッチアップができると考える。よって、今年度の活動を通して、研究開始年度から多少形が変わった部分はあるものの、概ね目的としていた成果に繋げることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
学内での授業等による学習活動データについては複数年のアンケートデータやインタビュー調査結果をまとめて定量的な分析を進めていく予定である。また、学習活動を通して意識や考え方の変化を認識した結果、具体的にその後の進路や留学を含む学習活動の選択に何か影響しているか、追跡サンプル調査を試みる。 海外渡航経験によるグローバル市民育成における研究活動においては、今年度の研究での課題として現地訪問の醍醐味である現場での感情の動き、観察、体感によって得た知見と知識、コンテンツの理解を有機的に繋げて理解を深めるということの難しさが確認されたため、どのような介入や仕掛けを作っていくことで知的な経験と五感を使った学習体験が作用しあい、より深い学びへと繋がっていくかという点について着目していきたいと考える。 現在、これまでの学内授業活動でのアンケート・インタビュー結果から学内におけるグローバル学習活動の効果的な方法やインプットなどを研究成果の一部としてまとめており、これを完成させるとともに、最終年度に向けて上記のような活動や分析結果をまとめ、研究成果として発表する予定である。
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