研究課題/領域番号 |
19K14274
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 桃山学院教育大学 |
研究代表者 |
柴 恭史 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 准教授 (80761139)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | バッファ・ボディ / 大学間連携 / 高等教育と社会の連携 / 高等教育改革 / 大学コンソーシアム / アクチュアリー / 高等教育 / 地方創生 / 中間組織 / ネットワーク分析 / 教育政策 / イノベーション / 大学経営 / ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本の高等教育改革が極端な競争的環境のもとで進められているためにかえって新たな取り組みの普及が進まず非効率化していることを大きな問題と捉えた。 その解決のため、大学間で効果的な取り組みを共有し社会との橋渡し役となる「バッファ・ボディ」という中間組織モデルを考え、その機能を明らかにすることが本研究の目的である。 具体的にはアメリカの事例をもとに効果的な連携方法と組織構造を明らかにするとともに、経営学におけるネットワーク組織論の知見をもとに、組織(大学や企業など)同士のどのようなつながりが新たな教育プログラムの開発および普及を可能にするのかを考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は高等教育改革が過度に競争的状況に陥ること、および社会から目的意識の希薄な改革要求が過剰に行われることによって、各教育機関が孤立しリソースの不足等を原因として実質的改革が挫折するという問題に注目している。この課題を乗り越えるために、大学連携組織と社会との中間組織の2つの性質を備えたバッファ・ボディという組織モデルを想定し、その構造について検討を進めている。 本年度は、日本におけるバッファ・ボディとなる可能性の高い大学連携の一つである「大学コンソーシアム」に注目し、各種の大学コンソーシアムが加盟大学および自治体や産業界などの社会とどのように関わっているのかを調査検討した。複数の大学コンソーシアムの実地調査およびその比較により、以下の点が示唆された。 第一に、このようなコンソーシアムに対して、自治体や産業界から積極的なアプローチが行われることは少数の事例を除きほとんどない。概して社会の側はコンソーシアムを通じた高等教育の変化に対して受動的であり、フィードバックも弱い。コンソーシアムもこの点について課題意識を持っており、近年はどのようにコンソーシアムという場の価値を社会に伝えるかが重要なテーマとなっている。 第二に、コンソーシアムと各加盟機関との関係においては、独立した事務局を置いている場合であってもコンソーシアムは各機関に対して従属的な立場にあることも多く、各機関内部における教育活動への影響、たとえば共通プログラムの開発などの動きは限定的である。そのため、コンソーシアムの主体的事業は各機関から分離した独自事業として動くことも多く、高等教育改革に必ずしもつながっていない。 第三に、コンソーシアム自体はこうした課題に対しかなり意識的に対応を試みている。その一方で、より実効的な対応のためにはリソースは十分とはいえず、事務局組織の教育的専門性の向上も求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は今年度が最終年度であったが、COVID-19の感染拡大等外的要因による調査の遂行等の遅れにより、これまでの研究成果全体をとりまとめるには至らなかった。したがってスケジュール上は遅れが生じている。 一方で、研究成果の面では当初想定していなかった発見も多い。たとえば、これまで本研究では日本国内におけるバッファ・ボディ型組織はあまり存在しないと想定してきた。しかし、実地調査を通じて、大学コンソーシアムなどは主体的な事業実施を目指して意欲的な活動を行っており、バッファ・ボディとしての機能の萌芽が見いだされ、今後個別大学や社会と関係性を構築する過程でバッファ・ボディとして成立する可能性が指摘できた。また、アクチュアリーなどの専門職団体の活動を検討するなかで、高等教育に対する社会の要求は必ずしも実際のスキルに対する要求ではなく、その背景となる基礎的な知見の蓄積を求める場合もあることが見いだされた。 以上の点から、研究成果のとりまとめはあるものの、それは当初想定していなかった知見の蓄積によるものでもあり、研究課題の内容面ではおおむね順調に進展していると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
2度の研究期間延長を経て、次年度が研究の最終年度であるため、これまでの研究成果を整理し、バッファ・ボディの機能として統合するとともに、これまでの事例をモデルにもとづいて再分析を行い、妥当性を検証する。
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