研究課題/領域番号 |
19K14301
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09060:特別支援教育関連
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
吉井 涼 福山市立大学, 教育学部, 講師 (50733440)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | アメリカ合衆国 / 優生学 / 測定 / 重度・重複障害 / 養護・訓練 / 学業不振 / 精神薄弱 / 精神科医 / 知能検査 / インクルーシブ教育 / 教育責任 / 精神医学 / 特殊学級 / 医療化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、19世紀末から1960年代の米国において、通常教育関係者が、学業不振児の教育責任と教育の在り方をどのように考えていたのかを明らかにし、特殊教育という世界の形成に対する通常教育関係者の認識とその形成に彼らが果たした役割を考察する。本研究課題は、通常教育と特殊教育の一元体制への願望を持ちつつも、現実における細分化という二つの極の間を揺れ動いてきた米国の学校教育の歴史を明らかにし、インクルーシブ教育が抱える相克の系譜を解き明かすことにつなげるものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、米国において通常教育と特殊教育という二元的世界が形成される過程を検討するものである。2022年度は、特殊教育専門家、心理学者や精神科医に焦点をあてて研究を進め、以下の3点の成果を得た。 (1)特殊教育・インクルーシブ教育に関する近年の議論を整理した。まず、Sally Tomlinsonによる『A sociology of special and inclusive education : exploring the manufacture of inability』の翻訳・出版を行った。同書では、特殊教育がどのようにして社会的不平等を作り出してきたのかについて分析を行っており、特殊教育という世界が、多様なニーズを持つ子どもたちに与えた影響を検討するうえで重要な視点を提供するものである。さらに、アメリカとイギリスにおける近年のインクルーシブ教育をめぐる議論について整理・分析を行った。 (2)特殊教育の世界の代表ともいえる重度・重複障害児教育について、教育方法とその専門性をめぐる議論を明らかにした。具体的には、肢体不自由養護学校における養護・訓練をめぐる心理学的アプローチと医療的アプローチの議論に焦点をあて、心理学的アプローチを開発し実践した人物の思想を明らかにした。肢体不自由児の養護・訓練を担当する教師には、教育以外の専門家の知見を積極的に摂取したうえで、それらを学校教育の観点から整理し、独自の専門性を醸成していくことが求められていたことが明らかになった。 (3)1930年代から1950年代頃までのデラウェア州に焦点をあてて、同州の優生学運動に関する資料のさらなる収集を行うとともに、優生学運動の拠点であるデラウェア州立病院精神衛生クリニックに関する一次資料の所蔵調査を行った。同州の優生学運動を多面的に分析するためには、州慈善委員会年次報告書を検討する必要が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時(2019年度)には想定できなかった長引く感染症による制約により、4年間の研究計画の変更を余儀なくされてきた。海外渡航制限等の影響による現地での資料収集や情報収集が困難であったが、この点については、これまでの経験を生かして、インターネットを通じた資料調査と資料収集を一部行うことができたため、研究の遅れを取り戻しつつある。しかし、現在検討中の研究課題の精密な分析には、現地での資料収集が必要であることが明らかとなり、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカにおける資料収集を行う予定である。デラウェア大学付属図書館を中心に、優生学にかかわる資料を収集し、分析を行う。加えて、これまでの歴史研究による成果から、現代のインクルーシブ教育への示唆を得るため、現代アメリカと日本におけるインクルーシブ教育の動向と議論について検討し、本研究課題の総合的考察を行う。
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