研究課題
若手研究
外科医の減少が問題となっている現在、医学部教育における外科学教育の見直しが必要である。我々は医学部生が外科学の知識を応用した医学的な意思決定が行えることを教育目標とし、その一環として外科臨床実習を行う医学部生を対象に、実症例を用いた「問題解決型実習(Project Based Learning; PrjBL)による手術計画立案実習」を考案、試行中である。本教育方略は国内外で例をみない新たな外科学教育手法であり、その教育効果は明らかではない。本研究は「問題解決型実習(PrjBL)による手術計画立案実習」の外科学教育方略としての有用性を検証し、本方略の良好なエビデンスを形成することを目的とする。
2019年度から2021年度まで、約350名に対してProject Based Learning (PrjBL)方式による手術計画立案実習を実施し、アンケート形式により学生の学習意識の変容を評価した。その結果、実習修了時には病変の解剖,手術適応やリスク評価等の手術計画PBLで検討した項目に対する重要性の認識が増す一方で,術式や手技など,手術内容に対する重要性の認識が減少した。本件等は日本外科学会学術集会(2回)をはじめとして国内の複数学会・研究会で発表、また日本外科学会雑誌にも2回掲載されたほか、国内メディアからも取材をうけ、医学系情報誌に研究内容が一部報道された。
本教育方略のコンセプトは国内外に類例がなく、実施可能性、その教育効果が未検証であった.今回の研究により、本教育方略が従来の医学部教育の枠組みの中で無理なく実施できること、コロナ禍における制限された教育環境でも、教育コンテンツのオンライン化などで継続して実施可能であることが実証された。すなわち、本教育方略は本邦の医学教育において環境を問わず実施可能な、汎用性の高い教育方略と考える。教育効果としては実習修了時に術前評価に関する重要性の認識が増す一方で、手術内容に対する重要性の認識が減少した。バランスのよい外科医学教育を実施するうえで本教育方略の適切な立ち位置についてはなお検討を要する。
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日本外科学会雑誌
巻: 122 ページ: 581-583
巻: 121 ページ: 656-658