研究課題/領域番号 |
19K14379
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 英子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (40761630)
|
研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 共感覚的傾向 / 漢字学習 / 発達 / 小学生 / 算数学習 / 色字対応 / 共感覚 / 文字認識 / 数認識 / 意味理解 |
研究開始時の研究の概要 |
共感覚とは、文字に対して色の印象を持つなど、複数の感覚や認知が同時に感じられる現象である。本研究では、次の2つの実験を実施し、漢字、数学という抽象的な事物に対して、色などの具体的なイメージを割り当てることによって、意味理解が助けられることを示す。 1) 小学3-6 年生を対象に、漢字の読み替えによる共感覚的傾向の発達的変化を捉える。新しく漢字の読みを学習するに連れて、共感覚的傾向が変化すると仮説を立て、検証する。その結果、共感覚的傾向の決定要因を同定し、学習との関連を示すことが期待される。 2) 共感覚的傾向が数学の理解に寄与しているとの仮説を立て、数学者を対象にした実験により、これを検証する。
|
研究実績の概要 |
共感覚とは、文字や音に色のイメージがあるなど、複数の感覚や認知が同時に感じられる現象である。共感覚は人工の約1%に見られることが知られているが、近年の研究においては一般的な成人においても、文字と色との間に弱い連関が見られるなど、共感覚的傾向と呼ばれる、共感覚と類似した対応付けがあることが明らかになってきた。これまで文字に対して色などの具体的なイメージを割り当てることにより、意味理解が助けられる可能性が示唆されてきた。そこで本研究課題では、学習の段階における共感覚的傾向の変化を調べ、共感覚的傾向と学習との関連を示すことを目的とし、以下に示す<実験1><実験2>の2つの実験を計画した。 <実験1>として計画されていた、小学生に見られる共感覚的傾向の発達的変化については、前年度に行った小学生184名を対象にした調査について、当該年度では分析を行った。仮説とは真逆の結果が得られたが、学術的な意義があり、その結果を2022年11月に米国ボストンで開催されたPsychonomic Society の年次大会において口頭発表を行った。そこで議論された内容をもとに論文の執筆を行い、まもなく学術的論文誌に投稿予定である。 <実験2>として計画されていた数学者に見られる共感覚的傾向については、本年度では、実験群222名、統制群158名に対して調査を行った。仮説を支持する結果が得られ、現在は論文投稿準備を行っている。 当該年度の予算として国際学会への参加費を計上していたが、新型コロナウイルスの流行により現地参加を見合わせたため、予算執行の計画を一部変更した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、<実験1>と<実験2>が計画されていたが、どちらも予定通りに調査が終了し、現在は論文を執筆・投稿する段階である。 <実験1>の結果については上述の国際会議などにおいて十分な議論が重ねられ、現段階において学術論文として投稿するのに十分な質であると自己評価している。また当該年度には<実験1>の発展として、小学生1名を対象にしたインタビュー調査を実施し、質的研究の分析手法であるSCATを用いて分析を行った。この分析により、上記で得られた知見が小学生の生活にどのように関わっているのかを明らかにし、将来的には教育的な働きかけについて検討するための基礎となることが期待される。当初予定されていた計画から、応用を見据えた研究へと発展し、当初の計画以上に進展していると考えている。 <実験2>については、現在結果を分析中であり、今後は論文投稿に向け、結果について議論を行うことが必要であるが、当初の予定である2023年度中には論文投稿・出版を目指している。
|
今後の研究の推進方策 |
<実験1>についてはまもなく論文を学術論文誌に投稿し、査読のやり取りを経て出版されることを目指している。 <実験2>については、当初の仮説に基づき、結果を分析し終わった段階であるが、結果をどのように学術的文脈に位置づけるのかの議論が必要であり、研究として成熟しているとは言い難い。当該年度は新型コロナウイルスの流行に伴い、国際学会への現地参加を見合わせたが、来年度以降は現地参加にて国内外の研究者と議論を行い、研究内容について検討を行うことで、学術的論文誌への投稿・出版を目指したい。
|