研究課題/領域番号 |
19K14475
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
|
研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
村越 琢磨 駿河台大学, 心理学部, 准教授 (70624724)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 視覚表象形成過程 / 視覚運動協応 / 境界拡張 / 表象形成過程 / 記憶表象 / 運動制御 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,視覚対象への身体運動制御を伴う場面での表象の修正メカニズムの解明を目指す。スマートフォンなどでのタッチパネルによる機器操作では,視覚対象に対して指先でタッチするといった運動制御が必要となる。様々な錯視現象が示すように,視覚系は環境の物理的な大きさなどを必ずしも正確に知覚しているわけではない。しかしながら,我々はスマートフォンの画面中の小さなアイコンなどにも極めて正確にタッチすることができる。これは視覚系で形成された表象を運動制御時に修正するメカニズムが存在することを示唆している。本研究では,この表象修正時の座標変換メカニズムの時空間特性を解明する。
|
研究実績の概要 |
本年度は,視覚系の検討として境界拡張現象の生起要因の一つとして考えられている,視覚場面の背景とオブジェクトの関係に関して,視覚刺激を観察する際の注意の向け方について実験を行った。具体的には,呈示された刺激画像の境界判断に際して,画像内のオブジェクトに注意を向けて画像を観察した場合と刺激画像の境界に注意を向けて画像を観察した場合の境界拡張の生起割合を比較した。実験では知覚された境界の判断にこれまでに実施した実験と同様の調整法を用いたが,上下左右の4本の境界を独立に調整する方法ではなく,縦横比を固定したまま上下左右の境界が同時に変更される調整法を採用した。その他の手続きについてはこれまで実施した実験と同様の手続きにて測定を行った。実験の結果,刺激画像内のオブジェクトに注意を向けた場合と刺激画像の境界に注意を向けた場合の両方の条件において知覚された領域の大きさについて違いはみられなかった。この結果から,境界拡張現象における表象の拡張メカニズムは視覚処理過程のごく最初期の段階で生じていることが示唆され,これは本研究の仮説である視覚処理過程での初期段階において境界拡張を生じさせる表象形成処理が行われ,その後vision-for-perceptionとvision-for-actionの異なる勝利経路の情報が統合される段階において,拡張が生じた視覚表象が修正されるメカニズムに合致する結果である。また,触覚系の検討として触知覚閾に注意がおよぼす効果について実験を行った。この実験では能動的に注意を向けた場合と受動的に注意がひきつけられた場合の触知覚閾の変化を測定した。その結果,呈示される触刺激に対して能動的に注意を向けた場合には閾値が高くなる傾向が見出された。さらに,この効果は自己運動を伴う場合には生じるが,自己運動を伴い場合には効果が生じないことも示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までと同様に感染症拡大予防対策のため,実験室に実験参加者を招き入れ身体接触を伴う手続きや機器の使用には制限がある状況であった。そのような状況の中で視覚系を主に用いる実験計画を進めることで研究の進捗を計ったが十分に研究計画が進捗したとまでは言い難い。特に触知覚を用いた身体運動系の部分について,できればもう少し研究を推進したい状況であった。また,投稿論文の受理に関しても当初の予定よりもやや遅れており,データの再分析および考察の練り直しを行いつつ論文投稿を進める必要がある。しかしながら,実験室使用や実験実施の制約も大幅に解除された際に向けて今後の実験システムの構築および実験準備については修正された計画に沿って進めることができた。また,投稿論文の執筆に関しても修正作業が順調に進んでおり,次年度に向けての成果報告の準備を整えたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は研究期間の最終年度をむかえるため,まずはこれまでに実験で測定したデータについて分析が完了していない部分については分析を進め,成果発表のために投稿論文として纏める作業を行う必要がある。その中で追加のデータが必要な部分については早い段階でデータ測定を完了して投稿論文の完成を急いでいく予定である。その他の研究計画部分については,特に視覚表象形成過程で視覚系と運動系の参照する座標の違いがどのように解決されるかについて座標変換の観点から検討しようと計画している。その検討結果から視覚系と運動系での知覚内容のギャップを埋める方法が解明されれば,本研究のメインテーマである,視覚対象への身体運動制御を伴う場面での表象の修正メカニズムを明らかにできると考えている。
|