研究課題
若手研究
本研究では、学童期の注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)における顔認知障害の神経基盤とその個人差を、脳活動計測によって実験的に検討する。特に、腹側経路の“顔の変化しない情報(人物)”の処理と背側経路の“顔の変化し得る情報(表情)”の処理に焦点を当て、ADHD児における顔処理の特性を明らかにする。
本研究は、児童期の注意欠如・多動症(ADHD)における顔認知障害の神経基盤を非侵襲的脳機能計測である近赤外分光法(NIRS)によって実験的に検討することであった。本課題の最も大きな成果は、表情処理に関連する後部側頭領域における怒り顔の処理が治療薬(塩酸メチルフェニデート:MPH)の服用によって促進されることを示したことである。この成果は、査読付き国際学術誌(Neurophotonics, 2020)に発表された。また、日本語の総説としてまとめ発表するなど、一定の成果が得られた。さらに、本研究の成果を踏まえて、一般向けに発達障害の知覚処理に関する講義を行うなどの社会貢献活動も積極的に行った。
最も大きな成果は、1つ目に幸福表情の処理においても、定型発達がSTSに依存するのと異なり、ADHDでは後頭葉顔領域の活動が優位になるという、非定型なパタンを示したことである。この結果は、これまで障害がないとされてきた表情においても、定型とは異なる見方をしている(手がかりや注目する情報が異なる)可能性を示唆するものである。2つ目は、治療薬(塩酸メチルフェニデート)の服薬によって怒り顔に対する後頭葉顔領域の脳活動が有意に上昇した点で、実行機能などの前頭葉の認知機能以外の脳内処理においても治療薬が奏効する可能性を示唆する。これらの知見は、ADHDに特有の視覚認知の理解の一助になると考えられる。
すべて 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Neurophotonics
巻: Apr;7 号: 02 ページ: 025003-025003
10.1117/1.nph.7.2.025003
ベビーサイエンス
巻: 20 ページ: 2-21
40022595869