研究実績の概要 |
ディリクレL関数の積分平均と零点密度評価の関連性に関する研究を行った. これまで, リーマンゼータ関数やディリクレL関数など数論的な意味を持つL関数の零点密度の評価については半世紀以上にわたり様々な研究者により調べられてきたが, そのほとんどの研究ではL関数の絶対値のベキの中心線上の積分平均に関する結果が用いられている. たとえばリーマンゼータ関数の零点密度評価では, Inghamによる4乗平均の漸近公式やHeath-Brownによる12乗平均の評価などが利用される. リーマンゼータ関数やディリクレL関数の中心線上のベキ乗平均の漸近挙動に関してはランダム行列理論などに基づく予想があるが, 高次のベキの場合はその予想は未解決である. そこで今回の研究では, 自然数kに対しディリクレL関数の2k乗平均が予想通りの大きさになると仮定した上で, ディリクレL関数の零点密度評価がどの程度改善できるかを調べた. 研究には積分平均の仮定の他, Halasz-Montgomeryの不等式, Huxleyの鏡映原理, ディリクレ多項式の平均に関するHeath-Brownの評価, Bourgainによる零点を組み分けする方法などを利用した. これにより, 高次ベキ平均に関する予想を仮定するとディリクレL関数の零点密度に関して期待されている何種類かの評価が成り立つ範囲が, これまでに比べある程度まで拡張できることが証明できた. また, 積分平均の予想を仮定する方法による改善の限界を明らかにした. これらの結果は1本の論文にまとめ, 海外の雑誌に投稿中である.
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