研究課題/領域番号 |
19K14546
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷部 高広 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00633166)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 自由確率論 / ランダム行列 / 分枝過程 / Loewner chain / branching process / monotone independence / random matrix / bifree independence / Markov-Krein変換 / 単峰性 / マルコフ過程 / 加法過程 / 単調独立性 / 自由独立性 / 単葉関数 / 単調確率論 |
研究開始時の研究の概要 |
量子物理学においては物理量が単なる数値ではなく「非可換」かつ「確率変数」である.数学的には関数解析学や作用素環論において,確率論を取り込みながら量子論の基礎が作られてきた.いったん量子物理を離れてその数学的構造に注目して調べてみると,確率論との興味深い対比が見られる.例えば,複数の物理量(非可換確率変数)に対して「独立性」を数学的に定義すると,幾つかの異なった定義が可能である.その中で「単調独立性」というものが知られており,本研究ではこの単調独立性を軸にした非可換確率論と古典的な確率論の間の対応関係,さらに複素関数論における単葉関数の対応関係を解明する.
|
研究実績の概要 |
正規分布のfree Levy measure に対する漸近的解析を行なった.正規分布は確率論において基本的分布であることは周知の事実であるが,自由確率論においてはさほど注目すべき役割を担っていない.それにも関わらず,自由無限分解可能であったり,より強く自由自己分解可能といった,ある種の自由確率論的に自然な性質を持っている.この研究により自由確率論における正規分布の理解がさらに進んだと言える. Cyclic monotone independenceと呼ばれるランダム行列のサイズ無限大極限に現れる新しい独立性に対して,ヒルベルト空間のテンソル積を用いた解釈を与えた.さらに(ランダムでない)グラフの隣接行列の固有値解析へ応用を与えた. 2010年ごろに書いてから未出版のままになっていたプレプリントの結果が最近になってランダム行列の解析に応用されるといった思わぬ展開もあり,これを機に本格的に改訂を行なった. 以前に,Loewner chainと加法過程,非可換確率過程の対応関係の研究において,確率分布の族に対する「広義一様弱収束」概念を導入した.この収束概念についてさらなる解析をし,また応用として,加法過程の広義一様弱収束の特徴付けを行った. 個体数変化の確率モデルに分枝過程と呼ばれるものがある.複素関数論の中で古典的なツールとして知られるLoewner chainを用いて分枝過程を解析した.複素関数論を用いた新しい分枝過程の数学解析の手法を提供できたものと考えている.Loewner chainはこれまで,複素関数論への応用の他は,SLE理論への華々しい応用が見出されていたが,今回の研究により,確率論への新たな応用を見出すことができた. 以上の研究結果は,いずれも既に論文として出版済みまたはプレプリントとして公開されている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は色々と未完成だった研究に本腰を入れて取り組み,多くの論文を取りまとめた. また長い間改訂作業に取り掛かれていなかったプレプリントの改訂を完成させた. 当初は予定していなかったが,正規分布のfree Levy measureに加えてboolean Levy measureについての新たな知見が得られ,自由無限分解可能分布の研究に大きな貢献ができた. ランダム行列の研究についても大きな進展があった. そのほか,いくつかの共同研究の取りまとめが順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
ランダム行列の固有値解析に対する理論をさらに進める. Loewner chainと確率過程の関係について,いくつかの課題が残されているため,引き続き取り組んでいく. いくつかの論文の取りまとめを進めていく. 京都とメキシコに出張し,Benoit Collins, Octavio Arizmendi,Jose Luis Perezとの研究打ち合わせを予定している.その他,ランダム行列に関する京都とカナダの研究集会への参加し,情報収集と研究結果について講演を行う予定である.
|