研究実績の概要 |
研究実績の概要は以下である. 【1】 有理曲面の実現(特異点配置)が, アフィンワイル群対称性において, q差分の場合でE8, E7, E6, D5, A4, A2+A1, A1+A1型, 加法差分の場合でE8, E7, E6, D4,A3型まで進んでいる. 【2】 長尾と山田(神戸大学)はアフィン・ワイル群対称性E7型q差分パンルヴェ方程式の有理曲面の実現3つに対する, 基本データ(方程式, アフィン・ワイル群表現)をそれぞれ3組構成した. またそのアフィン・ワイル群表現3つの相互関係を明らかにし, 3つのうち2つはある共役変換の下で等価である(論文投稿中). 【3】 ラックス・ペアと呼ばれる, 線形差分方程式とその変形方程式の組の両立条件として, 離散パンルヴェ方程式は記述される. 一般には, ある離散パンルヴェ方程式に対応する, ラックスペアの変形される線形差分方程式は一意とは限らないが, 2種類以上の例は少ない. アフィン・ワイル群対称性E7型q差分パンルヴェ方程式に対して, 2種類の線形差分方程式を構成した. 【4】 アフィンワイル群対称性E6, D5型q差分パンルヴェ方程式を有理曲面の実現に応じてそれぞれ4個, 9個を構成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況がやや遅れている理由は以下である. 【1】 対称性が高いクラスは有理曲面の実現の個数が少ない(例えばE8, E7型はそれぞれ1個, 3個)がアフィンワイル群の表現が複雑であり, その平行移動部分がなす離散力学系を簡潔な離散パンルヴェ方程式に表示することが難しい. 【2】 対称性が低いクラスはアフィンワイル群の表現が複雑でないが, 有理曲面の実現の個数が多く存在し(例えばA2+A1, A1+A1型はそれぞれ20個以上), 種類が多い意味において基本データの構成が難しい. 【3】 離散パンルヴェ方程式に対応する, ラックス・ペアの変形される線形差分方程式に対して, q差分E7型の場合と同様に, 下位のq差分の場合(E6, D5型など)においても, 2種類(従来よく知られているものとは別のもう1種類を含めて)ずつ構成できる可能性は高い. 【4】 方程式たちの直接的な関係, アフィンワイル群表現たちの関係, ラックス・ペアの変形される線形差分方程式たちの関係を調べる必要がある. 【5】 加法差分では差分クラスではq差分より下位だが, 計算は複雑になる.
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今後の研究の推進方策 |
以下の順で, 今後の本研究を推進する. 【1】 q差分と加法差分の場合において, まず計算上扱いやすいq差分の場合を優先する. 【2】 基本データとして, 有理曲面の実現(特異点配置)とそれに対応する方程式の構成を優先する. まずは, アフィンワイル群対称性A4型q差分パンルヴェ方程式を有理曲面の実現(10個以上)に応じた構成を進めたい. 【3】 パデ法がで適用可能なクラスにおいて, ラックス・ペア, 超幾何関数型特殊解の構成を進めたい. 特に, q差分のE7型の場合での, ラックスペアの変形される2種類の線形差分方程式が構成した結果と同様に, 下位の場合(E6, D5型など)でも2種類の線形差分方程式を構成させたい. 【4】 有理曲面の実現に対応したアフィン・ワイル群表現の構成を進めたい. 【5】 方程式たちの直接的な関係, アフィンワイル群表現たちの関係, ラックス・ペアの変形される線形差分方程式たちの関係を明らかにしたい.
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