研究実績の概要 |
(1) 長尾と山田(神戸大学)はアフィン・ワイル群対称性E7型q差分パンルヴェ方程式の有理曲面の実現3つに対する, 基本データ(方程式, アフィン・ワイル群表現)をそれぞれ3組構成した. またそのアフィン・ワイル群表現3つの相互関係を明らかにした(論文投稿中). (2) 長尾は, パデ法を用いて, アフィン・ワイル群対称性E7型, E6型, D4型, A3型加法差分パンルヴェ方程式の基本データ(ラックス・ペア)を構成し, それらの退化極限を与え, 系統的にまとめた(明石高専紀要で論文発表). (3) 長尾はアフィンワイル群対称性D4型加法差分パンルヴェ方程式の多変数的拡張を与え, 基本データ(方程式, ラックス・ペア, 一般超幾何関数による特殊解)を得た. 副産物として, その多変数的拡張の自励化として超楕円曲線に付随する離散可積分力学系を構成した. またq差分ガルニエ系からの簡約と, E7型, E6型, D4型加法差分パンルヴェ方程式への簡約を与えた. さらにE7型加法差分パンルヴェ方程式を, 従来の標準的な方向とは異なる変形方向について, 従来型と同様の因子化された方程式として与えた. Ormerod-Rainsによる加法差分ガルニエ系との関係を明らかした(論文準備中). D4型加法差分パンルヴェ方程式の高階的拡張について新しい発見が進展中である. (4) 長尾と山田は, アフィンワイル群対称性E7型q差分パンルヴェ方程式の多変数的拡張を与え, 基本データ(方程式, ラックス・ペア, 一般超幾何関数による特殊解)を得た. その多変数的拡張の自励化として超楕円曲線に付随する離散可積分力学系を構成した. q差分ガルニエ系との関係を明らかにした. また, E8型, E7型q差分パンルヴェ方程式への簡約と, 楕円差分ガルニエ系からの簡約を与えた. Ormerod-Rainsによる対称q差分ガルニエ系との関係を明らかした(論文準備中). E7型およびE8型q差分パンルヴェ方程式の高階的拡張について新しい発見が進展中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的「有理曲面(特異点配置)の実現すべてに対して, 離散パンルヴェ方程式の基本データの完成を探求する」に対して, まず有理曲面(特異点配置)の実現が, アフィンワイル群対称性において, q差分の場合でE8, E7, E6, D5, A4, A2+A1, A1+A1型, 加法差分の場合でE8, E7, E6, D4,A3型まで進んでいる. これらについてはパデ法を用いて基本データ(方程式,ラックス・ペア,超幾何関数型特殊解)が構成することができる. 対称性が高いクラスは有理曲面の実現の個数が少ない(例えばE8, E7型はそれぞれ1個, 3個)がアフィンワイル群の表現が複雑であり, その平行移動部分がなす離散力学系を簡潔な離散パンルヴェ方程式に表示することが難しい. 一方, 対称性が低いクラスはアフィンワイル群の表現が複雑でないが, 有理曲面の実現の個数が多く存在し(例えばA2+A1, A1+A1型はそれぞれ20個以上), 種類が多い意味において基本データの構成が難しい. また, 加法差分では差分クラスではq差分より下位だが, 計算は複雑になる. 以上のような理由により, 研究の進捗がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究を推進する上で, q差分と加法差分において, まず計算上扱いやすいq差分の場合を優先する. パンルヴェ方程式の多変数的拡張および高階的拡張がq差分の場合で盛んに研究されている点においてもq差分を優先したい. また基本データとして, 有理曲面(特異点配置)の実現とそれに対応する方程式の構成を優先する. 次に, そこで得られた有理曲面の実現に応じたアフィン・ワイル群表現の構成を進めたい. アフィン・ワイル群表現の構成と並行して, パデ法がで適用可能なクラスにおいて, 方程式・ラックス・ペア, 超幾何関数型特殊解の構成を進めたい. 離散ガルニエ系の研究を継続しながら, 離散パンルヴェ系, 離散高階パンルヴェ系, 離散KP階層などの離散可積分系との関係も明らかにしていきたい.
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