研究課題/領域番号 |
19K14588
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2022) 東京大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
関坂 宏子 (山本 宏子) 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 上級研究員 (10759153)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 反応拡散系 / 非局所発展方程式 / 安定性問題 / 中心多様体縮約 / 安定性解析 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の発生や活動の中に現れる様々なパターンの形成に対して,空間非一様性や非局所性とパターンとの関係を調べる.これにより,現れるパターンがどのように定まるかを明らかにする.系が環境に依存する場合や系の中に大域的な影響が含まれている場合には,系の中に関数として非一様性や非局所性として表されることが期待される.したがって,本研究を通して系が持つ解構造,特に空間非一様性や非局所性とパターンの選択の原理との関係を明らかにすることを目標とする.
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研究実績の概要 |
本研究では,反応拡散系の斉次境界値問題に対する定常解・進行波解の安定性問題を考え,線型化作用素のスペクトル問題に対して,Evans関数の構成を行った.これは解析関数であり,Evans関数の零点が固有値と一致する性質を持つ.主に,Deng・新居(2006)により行われた手法を斉次境界条件と周期境界条件の両方に適用できるように一般化した.この結果は,関坂歩幹氏(明治大学)との共同研究であり,日本数学会秋季総合分科会(応用数学分科会)にて発表済みであり,論文をまとめて投稿する予定である. また,空間多次元における変調進行波解と呼ばれる進行波解の安定性問題を扱った.変調進行波解は,時間と空間に関して周期性を持った進行波解であり,偏微分方程式特有に現れる時空間パターンである.このような解に対して,上記と同様にEvans関数の構成を行った.この結果は,関坂歩幹氏(明治大学)との共同研究であり,応用数学合同研究集会にて発表済みである. 次に,畳み込み積分を含む反応拡散方程式に対する反応拡散近似について考察した.昨年度の研究により,よく用いられる積分作用素では非コンパクトになることや積分核に対して対称性を課していることが多くあったため,非局所項の修正をしつつ,より一般の積分核を考える必要があった.これらの理由に伴い,反応拡散系との関係を調べるために用いていた手法の反応拡散近似も修正し,実際に非局所反応拡散方程式の解が,ある反応拡散系の解で近似できることを示した.この結果は,日本応用数理学会年会等で発表済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
反応拡散系に対する解の安定性を調べるための手法の一つであるEvans関数の構成に関して,論文をまとめている最中であるが,具体例を計算する部分で遅れている.非局所反応拡散方程式の研究に関しては,通常用いられる積分作用素が非コンパクトになることや,積分核に対称性を課していることから,非局所項の修正,および一般化を考える必要があった.これらの理由に伴い,反応拡散系との関係を調べるための手法の一つである反応拡散近似の修正も必要になり,進行波解の存在や解の安定性問題に関するEvans関数の構成に遅れが出ている.非局所反応拡散方程式の安定性解析においても,通常の反応拡散系の手法が使えなかったため,代わりとなる方針を見つけたところである.
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今後の研究の推進方策 |
反応拡散系の定常解・進行波解に対する安定性問題に対して,具体的な方程式において構成したEvans関数,あるいはその近似関数を導出する.具体例として,空間2次元のある反応拡散系に現れるストライプパターンを考え,その安定性を調べる.これにより,一般化した無限次元Evans関数が,安定性解析に応用できることを示される.その後,論文をまとめて投稿する予定である. また,空間多次元における変調進行波解の安定性問題に関して,動座標に関して周期性を課した進行波解を扱っていたので,通常の変調進行波解に対してもEvans関数を構成できることを示す.これにより異なる空間周期進行波解を遷移する進行波解の安定性を扱うことができる. 非局所反応拡散方程式に対しては進行波解の存在を示し,近似する反応拡散系に対しても同様の性質を持つ全域解が存在するかどうかを調べる.特に第一成分の関数が非局所反応拡散方程式の解を近似するので,速度の違いがあるかどうかも調べたい.また,安定性問題についても無限次元Evans関数の構成を試みる.上記と同じ手法ではできないことが昨年度までの研究で分かっており,弱解の枠組みでEvans関数を構成した手法が適用可能かどうかを調べる予定である.
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