研究課題/領域番号 |
19K14594
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
國谷 紀良 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (60713013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 感染症 / 数理モデル / 基本再生産数 / 年齢構造 / 拡散 / ホップ分岐 / 反応拡散系 / 進行波解 / 後退分岐 / COVID-19 / 公衆衛生 / 時間遅れ / 感染症モデル / 空間構造 / 安定性 / 微分方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,集団内での感染症流行を表す数理モデルのうち,年齢や位置,性別などの個体の異質性を考慮できる構造化感染症モデルに着目する.そのようなモデルは偏微分方程式系であり,解析は一般に困難であるが,現代社会の多様な疫学データを有効活用する上で,その解析は必須の課題である.本研究では,感染症の流行強度を表す基本再生産数Roの観点からモデルを解析し,その結果を流行予測や防疫策の有効性の検証などの疫学的考察に応用する.
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研究実績の概要 |
本年度は,空間構造や年齢構造などの様々な構造を持つ偏微分方程式系や時間遅れ系の感染症の数理モデルの解析と応用に関する研究を行った.特に,感染者数に応じて人々の行動が変化する行動変容モデルを時間遅れ系として定式化し,感染症の再帰的な流行を意味する周期解が存在するための十分条件を導出した.具体的に,流行の指標である基本再生産数Roを定式化し,Ro < 1ならば感染症の根絶を意味する disease-free な平衡解が大域漸近安定となるが,Ro > 1ならば感染症の定着を意味するエンデミックな平衡解が唯一つ存在し,不安定化を伴うホップ分岐によって周期解が発生する状況が起こり得ることを示した.その他,空間構造を含むコレラ感染症のモデル,免疫保持期間を考慮した時間遅れ系のモデル,拡散と hyperinfectivity および非線形接触項を含む宿主病原体モデル,非局所的な拡散を含むワクチンモデル,細胞間感染と適応免疫を考慮した分数階微分方程式であるウイルスモデルなどの解析を行った。また,構造化感染症モデルの疫学的考察への応用に関する研究として,自然感染やワクチン接種後の経過時間を変数として含むモデルを構築し,免疫の減衰を考慮した上で,COVID-19に対するワクチンの最適な配分方法に関するシミュレーションや,集団免疫レベルの推計を行った.その他,時間遅れと非単調な非線形性を含むある反応拡散方程式の双安定性に関する解析結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年齢構造化モデルや反応拡散系,時間遅れ系,分数階微分方程式など,考慮する状況に応じて多岐にわたる構造化感染症モデルを構築し,それらの数学的性質と基本再生産数Roの関係に関する解析結果を得ることが出来たため.また,医療関係者や経済学者などの他分野の研究者との共同研究として,COVID-19に対する国内の集団免疫レベルの推計や,ワクチンの最適配分の問題といった,より実践的な応用研究に着手し,成果を得ることが出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
様々な方程式のクラスに属する構造化感染症モデルの解析を行い,統一的な理論の構築を目指す.特に,感染症の季節性を考慮する上で現実的となる非自律系のモデルの解の時間大域挙動と基本再生産数Roの関係に関心があり,研究を計画している.また,COVID-19に関するワクチン配分策や集団免疫レベルの推計等のこれまでのシミュレーションの結果をまとめ,将来の新たなパンデミックの際に有用となる数理モデルの理論を社会に提供する.
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