研究課題/領域番号 |
19K14611
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
橋本 一成 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10754591)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 非エルミート / 開放量子系 / リウビリアン / 例外点 / 電流ノイズ / 非エルミート系 / メゾスコピック系 / スピンポンピング / 量子ドット / 電子輸送 / 非平衡統計力学 / 量子輸送 / 量子ポンピング / トポロジカル不変量 / トポロジカル量子ポンプ |
研究開始時の研究の概要 |
量子ポンプは開放量子系の制御変数群(環境温度・ゲート電圧等)を周期的に変化させることで,ゼロバイアス下でも量子を輸送でき,多方面への応用が期待されている.しかし,量子スケールでは制御変数の値は常に揺らいでいるため,量子輸送の精密な制御は困難である.この困難を克服するため,本研究では例外点と呼ばれる非エルミート系特有の縮退点を取り囲む経路に関するトポロジカル不変な位相因子に着目し,種々の開放量子系に対して適用可能な新奇なトポロジカル量子ポンピングのプロトコルを理論的に提案する.もって,制御変数の揺らぎに対して堅牢な量子ポンプをデザインするための指導原理を構築する.
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研究実績の概要 |
令和5年度は2重量子ドットが2つの電極と結合したメゾスコピック系のリウビリアンが有する3重例外点の物理的効果に集中して研究を行なった. 主要な成果として、量子ドット系を介して電極間を流れる定常電流のノイズスペクトルが、例外点において非ローレンツ関数型の線形を示すことを発見した.これは、例外点におけるリウビリアンのジョルダンブロック構造に起因する非平衡緩和ダイナミクスの冪的な振る舞いに起因するものであり、時間発展における冪的な時間依存性をラプラス変換して周波数領域で見ることで、ノイズスペクトルの線形がローレンツ関数から狭小化として観測できることを明らかにした.この非ローレンツ型スペクトルの線形は例外点の次数と一対一対応しており、定常電流ノイズのスペクトルを観測することで、リウビリアン例外点の存在のみならず、その次数まで推定できることを示している. また、当該モデルのリウビリアン例外点を取り囲む経路に対して、ドット間の結合強度及びドット電極間の結合強度を有限時間で時間周期変調した場合の非断熱量子ポンピングについても詳細な検討を行なった.例外点近傍ではリウビリアンのスペクトルは準位反発を示しており、これを通過する経路に対する有限時間パラメータ変調に対して、過渡的な電流がLandau-Zener遷移に起因する電流振動を示すことを明らかにした.一方、経路1周に対する電流の積算値ではこの電流振動が平均化され、例外点近傍の準位反発や分岐截線に起因する有意な特異性は見出せなかった. 研究期間全体を通じて、当初の目標であった量子ポンピングの積算値に対する例外点の影響については有意な効果を見出すことができなかった.一方、副産物として得られた例外点における電流ノイズスペクトルの非ローレンツ型線形に関する発見は、メゾスコピック系におけるリウビリアン例外点の実験的検出に有用であると考えている.
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