研究課題/領域番号 |
19K14612
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 伸吾 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (40779675)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 超伝導 / マヨラナ準粒子 / J=3/2電子 / マヨラナ粒子 / トポロジー / ボゴリューボフフェルミ面 / 超伝導体 / 異方的超伝導体 / トポロジカル超伝導体 / トポロジカル物質 |
研究開始時の研究の概要 |
異方的超伝導体は非s波クーパー対の超伝導体であり、スピンや軌道自由度により多様なクーパー対を実現する。多様なクーパー対は、異方的超伝導体の物理を豊富にする一方で、実験的なクーパー対の決定は容易ではなく、多くの超伝導体のクーパー対が未解決である。本研究では、トポロジーの観点からクーパー対の検出法を提案する。トポロジーの解析は、多くの非s波クーパー対に対し固有の表面状態を予言する。この性質を応用し、クーパー対の対称性の違いを表面状態から読み解く理論を構築する。さらに、本研究では、トポロジーの解析による結果を表面コンダクタンスの計算より実証し、現実の物質で検出に有効な物理量も提案する。
|
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、トポロジーの観点からクーパー対の対称性の検出法を提案することを目的としている。本年度は、(1)J=3/2超伝導におけるスピン帯磁率の解析、(2)昨年度に引き続きマヨラナ準粒子の磁気応答について研究を行った。以下ではそれぞれの研究成果について述べる。 (1)J=3/2スピンを持つ電子の超伝導状態を「J=3/2超伝導」と呼ぶ。ここで、J=3/2スピンはスピンと軌道自由度の合成によって構成される。J=3/2超伝導は強いスピン相互作用と多バンド自由度の効果の協奏により発現する新奇量子現象の研究舞台として注目を集めている。 J=3/2超伝導のクーパー対の対称性は、偶パリティ超伝導に焦点を当てたとき、スピン1重項ペアとスピン5重項ペアが存在する。スピン5重項ペアはJ=3/2超伝導で現れる新しいペア状態であり、その物性はほとんどわかっていない。本研究では、スピン5重項ペアに着目し、スピン帯磁率の解析を行った。結果として、スピン5重項ペアでは、ペアの種類(立方対称性の下、ペア状態はA1g、Eg、T2gに分類される)に依存して特徴的なスピン帯磁率の振舞いを示すことを明らかにした。本研究は、J=3/2超伝導の基礎物性を理解する手がかりになると考えている。 (2)トポロジカル超伝導中のマヨラナ準粒子は固有の磁気構造を有している。先行研究では、時間反転対称性を持つ超伝導に焦点を当て、マヨラナ準粒子の磁気構造を空間群により網羅的に分類した。本研究では、この理論を時間反転対称性が破れた超伝導へ適用し理論の拡張を行った。結果として、カイラル対称性が保たれる限り理論が拡張可能であることがわかった。また、時間反転対称性の破れに伴い、新しい磁気応答が生じることを明らかにした。強磁性超伝導:UCoGeの模型に適用し、マヨラナ磁気異方性と磁気秩序との間に密接な関係があることも示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
J=3/2超伝導の研究は予定通りに進み、論文を出版することができた。他方、マヨラナ準粒子の磁気応答の研究は、いくつかの結果を得ているもののまだ研究途中である。来年度中には、研究成果をまとめて報告したい。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、以下の研究を進めていきたい。 (1)マヨラナ準粒子の磁気応答の研究 昨年度に引き続き時間反転対称性が破れた超伝導における磁気応答の研究を行う。昨年度は具体的にUCoGe模型を用いて磁気応答の解析を行い、時間反転対称性が破れた系でもカイラル対称性があるときマヨラナ準粒子の磁気応答が生じることを示した。本年度は、この現象を一般の空間群の場合に適用し、網羅的な分類を行いたい。分類を基に、クーパー対の対称性、時間反転対称性の破れ、マヨラナ準粒子の磁気応答の間の関係の構築を目指す。 (2)ボゴリューボフフェルミ面の安定性に関する研究 ボゴリューボフフェルミ面が理論的に提案されて以来、これを検出しようと精力的に実験的研究が行われている。しかし、その確実な証拠は未だ提示されていない。これらの現状を踏まえ、我々はボゴリューボフフェルミ面のエネルギー的安定性の問題に立ち返り解析を行いたいと考えている。
|