研究課題/領域番号 |
19K14615
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京大学 (2022) 学習院大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
白石 直人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30835179)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 非平衡統計力学 / ゆらぐ系の熱力学 / 揺動応答関係 / 量子熱力学 / リソース理論 / 小さい系の熱力学 / 熱力学的不確定性関係 / 孤立量子系の熱化 / 決定不能性 / 量子速度限界 / 緩和過程 / 可積分系 / 情報統計力学 / エントロピー生成 / 第二法則 / レプリカ対称性の破れ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非平衡状態が安定な平衡状態に落ち着く「緩和過程」の基礎を探究する。ほとんどのマクロな系では、非平衡状態から平衡状態への緩和が見られるが、一部の系では「平衡状態に緩和しない」ことも知られており、緩和の有無や緩和過程の熱力学的特徴は未だにきちんと理解されていない。 そこで、「平衡状態への緩和が起きる」条件として重要だと考えられる「局所保存量の不在」の厳密証明とその構造の解明、「平衡状態に緩和しない」系の代表例であるガラスの特徴を明らかにするための計算機科学的アプローチ、「平衡状態への緩和は熱力学的にどのような特殊性があるのか」を明らかにする関係式の導出、の三本柱で研究を進める。
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研究実績の概要 |
本年は、ゆらぐ系の熱力学の観点からの研究およびその成果をまとめることに注力した。 特に、カレントのゆらぎと応答について理解を深めるような研究を推進した。揺動応答関係はカレントのゆらぎと応答を結び付ける関係式として古くから知られている。カレントは時間反転反対称な量であるが、私は時間反転対称なカレント的な量を導入し、それがカレントの場合と同様な揺動応答関係を満たすことを発見した。時間反転対称な量は非平衡定常状態の物理において重要だと期待されている量である。今回導入された時間反転対称なカレントは、現時点ではその意味が完全に明らかにされているわけではないが、揺動応答関係を満たすという事実はその物理的な妥当性を支持する関係式である。 私はさらに、この時間反転対称なカレントが、平衡状態近傍のみならず、非平衡定常状態近傍でも揺動応答関係を満たすことを示すことに成功した。非平衡定常状態において普遍的に成り立つ関係式の模索は、この分野において熱心に行われているが、物理的に明快な形の関係式はほとんど得られていない。今回の結果は、時間反転対称なカレントがその正当性を認められるならば、物理的な意義が明確な非平衡定常状態周りの普遍的な関係式となり、意義は大きいと考えている。 また、ゆらぐ系の熱力学に関する研究は今年度以前にも多数の成果を出しているが、それらを含めたゆらぐ系の熱力学の教科書を執筆した。今年度時点で原稿は出版社に入稿し、その教科書は2023年5月に出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は昨年度までで想定以上に進展していたため、本年度はこれまでの研究をそのまま進展させていくとともに、成果をより広く発信することに注力した。具体的には、教科書の形で成果を残すことにし、その執筆を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はゆらぐ系の熱力学の研究進展と発信に注力したため、孤立した量子系の熱平衡化、及びランダムに相互作用するスピングラス系については、昨年度までに得られていた想定通りの研究進展にとどまり、それより先の研究進展があまり見られなかった。来年度は、ゆらぐ系の熱力学の研究を進めるとともに、残りの二つの分野についてもさらなる進展を試みる
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