研究課題/領域番号 |
19K14651
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鍋島 冬樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30782776)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 鉄カルコゲナイド超伝導体 / 磁気輸送特性 / ミュオンスピン緩和 / 磁場侵入長 / 薄膜 / 鉄カルコゲナイド超伝導 / 磁性 / マイクロ波伝導度 / 鉄系超伝導体 |
研究開始時の研究の概要 |
鉄カルコゲナイド超伝導体FeSeは,非常に小さいフェルミエネルギーおよび大きなスピン軌道相互作用を持つという稀有な性質をもち,これまでにない全く新しい超伝導状態が実現している可能性がある.本研究では,広い組成領域に渡って連続的な元素置換が可能である薄膜試料を作製し,様々な測定プローブ―例えば磁気輸送特性や磁場侵入長測定など―を用いた系統的な常伝導特性・超伝導特性の評価を行うことで,この物質群の超伝導の特異性・新規性を,多角的な視点から明らかにすることを目的とする.
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研究成果の概要 |
FeSe1-xTexと FeSe1-ySy薄膜の磁気輸送特性測定および磁場侵入長測定から,キャリア数とTcが正の相関を示すことがわかった.この結果は,電子ネマティック転移によるフェルミ面の変化によるキャリア数の変化がS置換とTe置換で違っていて,それがTcの振る舞いの違いの原因になっており,電子ネマティック転移やそのゆらぎ自身は超伝導(少なくともTc)には直接的には影響しないことを示唆している.さらに,S置換試料のミュオンスピン緩和実験を行い,高S置換試料は低温で磁気秩序を示すことを世界で初めて明らかにした.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
鉄カルコゲナイド超伝導体FeSeは超伝導転移温度Tcが低いものの,様々な方法でTcを大幅に上昇させることができ,さらなるTcの向上や実用化を目指し,超伝導メカニズム解明に向けて精力的に研究がなされている.FeSeは静水圧下でTcが4倍程度に増大するが,元素置換による格子の圧縮(化学圧力)ではTcの上昇は見られない.磁気的なゆらぎが超伝導の重要因子の一つだと考えられているが,本研究により,物理圧力と同様に化学圧力でも磁気秩序が誘起されることが明らかになった.今後この磁気秩序を詳しく調べることで物理圧力と化学圧力でのTcの違いを明らかにし,この物質のTc上昇のメカニズムを解明できる可能性がある.
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