研究実績の概要 |
固体物理におけるディラック電子は、トポロジカル材料における物性研究で盛んに研究が行われています。特にその輸送現象は、通常の電子の輸送現象とは異なる有意な機能が多くあります。現在では、その機能を積極的に活用した新たな電子デバイスの開発が精力的に行われるようになっています。
私たちはこれまでにディラック電子が存在する材料におけるスピントロニクスの理論研究を行ってきました。主に光とスピン(磁石の起源のようなもの)との間の相互作用に着目し、新たな光誘起起電力効果(Taguchi et al., PRB 93(R), 2016)、光誘起ホール効果(K. Taguchi, et al, PRB 94, 155206, 2016)を理論的に予言し、その観測方法を提言してきました。 本研究はこれまでの研究の発展系です。近年、Sr系やCa系アンチペロブスカイト型酸化物において、軌道角運動量を持つディラック電子が予言されました。これを新型ディラック電子と呼んでいます。従来型のディラック電子とは異なり、新型ディラック電子はが軌道角運動量を持つのが特徴です。これまでにも従来型では非自明な物理現象が数多く報告されて、その新たな原理とその原理の応用が大いに期待されていますが、新型においても同様の期待が持たれています。そこで私たちは、私たちのこれまでのディラック電子系輸送研究を発展させた研究ー新型ディラック電子特有の輸送現象の解明ーに挑戦しました。 2019年度(研究最終年度)の主要成果について説明します。 論文"Spin Hall conductivity in topological Dirac semimetals"を作成し、アメリカ物理学会誌PRBに出版されました。国際会議にて招待講演(1件)・基調講演(1件)・口頭発表(1件)を行い、これまでの研究成果の説明・発信を行いました。
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