研究課題/領域番号 |
19K14665
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
下川 統久朗 沖縄科学技術大学院大学, 量子理論ユニット, スタッフサイエンティスト (20633853)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 数値計算 / フラストレーション / スピン系 / 多重Q秩序状態 / スピン液体 / 厳密対角化法 / モンテカルロ法 / 多重q秩序状態 / 局在スピン模型 / 結晶学 / 微分幾何学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年複数の波数qの秩序が共存した多重q秩序状態が注目を集めている。例えば相互作用の競合がある古典ハニカム格子反強磁性体では、基底状態のリング型無限縮退構造を反映する形で、無限個の波数の秩序が共存した波紋秩序状態が実現する。この状態のスピンテクスチャは誘電分極の巨大渦を導く事が可能であり、電子工学的な観点からも興味深い。一方でこの状態の発現機構の詳細は未解明なままである。本研究では大型計算機を用いた大規模数値計算を通して、また結晶学や微分幾何学などの知見を用いつつ、波紋秩序状態の発現機構の解明や実物質での実現可能性を明らかにすることを目指す。
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研究成果の概要 |
リング縮退という特殊な縮退構造を母体として、熱・量子揺らぎが織りなす新奇な磁性現象に関する数値的研究を行った。J1-J2古典ハニカム格子磁性体では波紋秩序状態や副格子スカーミオン格子状態などの新奇な多重Q状態が実現することが明らかになった。また量子スピン液体候補物質Ca10Cr7O28の有効模型であるS=1/2二層カゴメハイゼンベルク模型の有限温度下においてスパイラルスピン液体の実現が明らかになった。更に高磁場に特化した新しい厳密対角化コードQS3を開発・オープンソース化し、高磁場スピンダイナミクスの解析から同二層カゴメ模型でスパイラルスピン液体・U(1)スピン液体の傍証を得ることも出来た。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
理論的・数値的取り扱いが難しいフラストレート磁性体における特殊なリング型縮退構造に対する熱・量子揺らぎの効果を厳密数値計算を通して調べたという意味で学術的意義は大きいと言える。また本研究成果の一部であるハニカム系での新しいタイプの多重Q秩序状態の発見は、省電力ナノデバイスなどへの応用の観点からも重要である。特に波紋秩序状態は伝導電子と結合することで誘電分極渦を作り出すことが可能な特殊なスピンテクスチャを併せ持つため、今後の工学的応用が期待される。また本研究で開発・高度化・オープンソース化された厳密対角化コードは物性物理分野の枠組みをも超えた更なる利用が期待される。
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