研究課題
若手研究
本研究は,集光強度が1e19 W/cm2を超える高出力短パルスレーザーと固体の相互作用を利用して直径百ミクロン程度の小さなコイルに強力な電流を流し,白色矮星や中性子星表層の磁場強度に匹敵する強磁場(B = 10 - 100 kT)を実験室内で生成しようというものである.この前人未到の強磁場の実現によって,これまで天文観測に頼っていた強磁場天体周辺での特異な物理現象(相対論的磁気リコネクション,非線形ゼーマン効果,超臨界密度プラズマ中の光伝搬etc.)の実験的研究が初めて可能になり,宇宙物理学の飛躍的発展に貢献すると期待される.
本研究では,白色矮星や中性子星表層の磁場強度に匹敵する磁場を実験室で生成する手法を確立した.高出力レーザーとミクロスケールの物質の相対論的相互作用を利用して,10 kT級の磁束密度で反平行磁場からトロイダル磁場まで多様な磁場を生成できることが示された.プロトン偏向法による磁場計測により,レーザー条件やターゲット形状と磁場配位,磁場強度,持続時間の関係が明らかになり,実験室宇宙物理学を含む様々な研究展開が検討された.目的に応じて最適な磁場を造り出せるよう制御パラメータが整備されたことも本研究の成果として極めて重要であり,単なる学術的興味に終わらない,実用的な強磁場生成法が確立された.
本研究の学術的意義はレーザーを用いた新たな強磁場生成法の確立により,地上で生成可能な磁場強度の上限が大幅に引き上げられたことにある.これにより,天文観測と理論計算に依存してきた磁気リコネクションを始めとする宇宙物理学において,「地上実験」という新しい研究アプローチの可能性が拓かれた.また,強磁場による高温プラズマの閉じ込め効果は核反応の促進効果をもたらし,慣性核融合炉や産業用中性子源の社会実装をより現実的なものにする意味でも本研究で得られた知見は重要である.
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (14件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
Review of Scientific Instruments
巻: 92 号: 6 ページ: 063301-063301
10.1063/5.0043628
Journal of Instrumentation
巻: 16 号: 02 ページ: T02005-T02005
10.1088/1748-0221/16/02/t02005
Physical Review E
巻: 102 号: 3 ページ: 033202-033202
10.1103/physreve.102.033202
Frontiess in Physics
巻: 8 ページ: 343-343
10.3389/fphy.2020.00343
120006884137
High Energy Density Physics
巻: 36 ページ: 100840-100840
10.1016/j.hedp.2020.100840
Journal of Physics: Conference Series
巻: 1686 号: 1 ページ: 012004-012004
10.1088/1742-6596/1686/1/012004
arXiv
巻: 1908.11430v1 ページ: 1-6