研究課題/領域番号 |
19K14747
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 九州大学 (2021-2023) 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (2019) |
研究代表者 |
森津 学 九州大学, 理学研究院, 助教 (20760010)
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研究期間 (年度) |
2021-03-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 反陽子 / ミューオン・電子転換 / レプトンフレーバ非保存 / J-PARC / ミューオン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はミューオン・電子転換探索実験COMETにおける反陽子起因背景事象を抑制し、標準理論を超える新物理の発見に資するものである。COMET実験では8 GeV陽子ビームと標的原子核との反応で生成した反陽子が測定領域まで輸送され信号事象と同じエネルギーの電子を放出する反陽子起因背景事象が存在する。この背景事象はこれまであまり重視されてこなかったが、将来的には深刻な背景事象となる可能性がある。本研究では実験データのない8 GeV近傍における反陽子の生成微分断面積を直接測定することにより、COMET実験における反陽子起因背景事象の見積り精度を向上させ、感度向上につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究はミューオン・電子転換探索実験COMETにおける反陽子起因背景事象を抑制し、標準理論を超える新物理の発見に資するものである。COMET実験では一次陽子ビームと標的原子核との反応で生成した反陽子が測定領域まで輸送され信号事象と同じエネルギーの電子を放出する反陽子起因背景事象が存在する。この背景事象はこれまであまり重視されてこなかったが、近年シミュレーションの精度向上により支配的な背景事象となる可能性が指摘されている。現在の見積りの問題点は、COMET実験で用いる8 GeV陽子ビームエネルギーでの反陽子生成断面積の実験データがないために10 GeV以上のデータからの外挿に頼っている点にある。本研究では8 GeV近傍における反陽子の生成微分断面積を直接測定することを目指す。これによりCOMET実験における反陽子起因背景事象の見積り精度を向上させ、 実験感度向上につなげる。 この実験における困難は反陽子より10~100万倍多く生成するパイ中間子との弁別である。そのためのトリガーやデータ解析技術の開発を進めている。今年度はトリガー検出器としては当初から考えていたアクリルチェレンコフ検出器に加えて反陽子 の対消滅信号を用いた弁別についても検討をおこなった。また、大強度加速器施設(J-PARC)においてはCOMET実験のためのビームラインが完成し、ビームコミッショニングを開始した。昨年度取得したデータの解析を進め、ミューオン輸送ソレノイドを通過してきたミューオンの数がシミュレーションと一致していることを確認した。 また、国際会議CLFV2023において本研究に関連する発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年度に「海外における研究滞在による中断」を終了して本研究活動を再開した。現職着任後は環境整備と大学業務の負担から研究活動にやや停滞が見られた。 また、新型コロナウイルスの影響が緩和されたとはいえ暫くは制約があり、研究活動を進める上でも困難があった。その中でもJ-PARCでは COMET実験のためのビームラインが完成し、ビームコミッショニングを実施できたことは大きな進展であった。並行してシミュレーションによる検出機の最適化 や反陽子弁別のための新しいトリガー手法の検討も進めており具体的な成果に結び付けられることを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではCOMET実験で特に重要となると考えられる200~400 MeV/c前後の反陽子の生成微分断面積の測定を目指す。また、8 GeV近傍における反陽子生成断面積の入射エネルギー依存性も重要である。これは、もし8 GeVでの反陽子生成断面積が予想以上に大きい場合には、COMET実験での陽子ビームエネルギーを下げる可能性を検討するためである。まずは実験データの存在する10 GeVの陽子ビームエネルギーで実験を始め、先行実験と比較することで実験の正確性を確認する。その後、 7~9 GeVの数点でデータを取得し8 GeV近傍でのエネルギー依存性の測定を目指す。これによりCOMET実験における反陽子起因背景事象の正確な見積りを提供し、実験の高度化につなげる。 これまでに引き続き具体的な計算やシミュレーションに基づいて測定手法の有効性を確認し、実験計画を検証する。当初から検討していたアクリルチェレ ンコフ検出器の開発を進める。輻射体の厚みや反射材の種類、読出しセンサーなどについて、パイ中間子での検出効率が99%以上となるように最適化をはかる。並行して反陽子の対消滅信号による弁別についても検討を進める。実験提案書を作成し、最終的には加速器陽子ビームを用いた反陽子生成断面積測定の本実験を目指す。
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