研究課題
若手研究
火星表層には様々な有機物が存在している。有機物は生命の発生・進化に必要不可欠な物質であるが、火星表層でのこれらの起源は未だ明確でない。火星隕石NWA 7034 (通称Black Beauty) は火星表層の堆積岩が隕石として地球に飛来したものであり、火星の有機物を含んでいることが示唆されている。本研究では、申請者が構築したX線・電子線・イオンビームを用いた複合顕微分析手法を用いて有機物をより詳細に分析し、(1)Black Beauty中の有機物の官能基組成・炭素/窒素/水素同位体比・共存鉱物との共進化過程を明らかにし、(2)火星表層を覆う有機物の起源を解き明かすことを目的とした研究を展開する。
火星角礫岩隕石Black Beautyから火星表層由来の有機物を見つけて、その形成・進化過程を解明するため、有機物汚染を制御した状況で研磨された隕石試料をSEM-FIB-STXM-TEM-NanoSIMSを用いた一連の複合顕微分析手法を用いて分析して、有機物の形態・産状・結合状態・化学組成・同位体情報を得た。結果、鉱物粒子に包有された産状とマトリクス中に点在する産状という2タイプの有機物が発見された。鉱物中の有機物は火星での火山活動に由来すると考えられているMMCと類似の特徴を示した。一方でマトリクス中の有機物は同位体的に火星表層由来と考えられ、水質活動に起因した微小鉱物をその中に含んでいた。
過去には水が疑いなく存在したとされる火星における有機物の存在やその特徴付けは、火星での生命発生の可能性を探る手掛かりであり、今後の生命存在可能性(ハビタビリティー)を議論する上でも非常に重要な知見となる。本研究が国際誌に掲載されれば、「火星の表層同位体情報を有する有機物を火星隕石から明確に見つけ出して特徴づけした」世界で初めての成果となる。また将来、火星表層試料が地球へ帰還して実験室や放射光施設で詳細な分析が行われた際には、本研究で特徴づけられたマトリクス中の有機物(δ13C = 15 ± 7 ‰、δD = 373 ± 68 ‰)が実際の帰還試料から見つかってくるだろう。
すべて 2023 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 8件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
Science
巻: 379 号: 6634 ページ: 8671-8671
10.1126/science.abn8671
Analytica Chimica Acta
巻: 1240 ページ: 340755-340755
10.1016/j.aca.2022.340755
巻: 379 号: 6634 ページ: 9057-9057
10.1126/science.abn9057
Astronomy & Astrophysics
巻: 671 ページ: A2-A2
10.1051/0004-6361/202244702
The Astrophysical Journal Letters
巻: 935 号: 1 ページ: 1-12
10.3847/2041-8213/ac83bd
Meteoritics & Planetary Science
巻: 56 号: 9 ページ: 1729-1743
10.1111/maps.13735
Minerals
巻: 11 号: 5 ページ: 514-514
10.3390/min11050514
Review of Scientific Instruments
巻: 92 号: 1 ページ: 013103-013103
10.1063/5.0020642
Materials Advances
巻: in print 号: 12 ページ: 4075-4080
10.1039/d0ma01026j
Life
巻: 10 号: 8 ページ: 135-135
10.3390/life10080135
Geochimica et Cosmochimica Acta
巻: 285 ページ: 55-69
10.1016/j.gca.2020.06.033
Scientific Reports
巻: 10 号: 1 ページ: 1-9
10.1038/s41598-020-58464-y
巻: 271 ページ: 61-77
10.1016/j.gca.2019.12.012
120006796066
PHOTON FACTORY NEWS
巻: 37 ページ: 15-18