研究課題/領域番号 |
19K14781
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2022-2023) 東京大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
北村 成寿 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (80757162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | イオン流出 / FAST衛星 / FACTORS計画 / 酸素イオン / 大気流出 / イオン加速 |
研究開始時の研究の概要 |
惑星大気が宇宙空間に流出する現象は、大気の進化の理解の上で重要な課題である。地球においては衛星等によって他の惑星では困難な詳細観測が可能で、大気流出の物理過程の理解に向け、日本の将来衛星計画の観測対象として検討されている。その探査の先鋭化に向け、FAST衛星の長期データを解析し、観測対象とすべき流出イオンの波動加速が顕著となる高度領域の解明とイオン流出量へのオーロラ関連のエネルギー入力や電離圏への日照の影響について定量的な評価を行い、「大気と固有磁場をもつ惑星からの大気流出」、「地球起源プラズマの磁気圏における役割」の理解に対して観測の観点から貢献する。
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研究実績の概要 |
将来の戦略的小型カテゴリーへの再提案を目指しているFACTORS衛星計画による地球からのイオン流出過程(特に波動によるイオン加速過程)の詳細研究を見据え、地球極域からの顕著なイオン流出がどのように発生するか明らかにするために研究を推進している。 FAST衛星の1998年付近の遠地点付近(高度3000-4100 km)のイオン、電子、電磁場のフラックスについての統計解析結果(大フラックスのイオン流出は日陰時にはほとんど起こらない事及び電離圏へのエネルギーインプットとイオン流出フラックスの経験的関係式)では、約1年程度のイオン種の区別は無いデータを用いて解析を行ったが、新たに使用可能となったイオン種を区別したデータについて、特に大フラックスの酸素イオン流出イベントについて詳細に解析できるように解析プログラムの準備や新たな期間でのイベント選定を進めた。その結果、大フラックスイベントに限ってイオン質量分析なしのデータとイオン質量分析ありのデータの不整合の可能性が見つかり、再較正データを生成した米国のニューハンプシャー大学のグループとの議論を継続している。 イオンの加速についてはイオンのサイクロトロン周波数付近の電場の波動の重要性が指摘されているが、大フラックスのイオン流出に伴ってどの程度の強度の波動が見られるのか、波動が宇宙空間からのどのようなエネルギー流入に対応しているのかは明らかになっていなかった。イオンの観測データに加え、電子の降り込み、波動データの解析も行い、特に磁気嵐などイオン流出が活発になる時期について、イオン加速に伴って従来シミュレーションなどで用いられるよりもかなり強い波動が観測されることを明らかにし、それがアルフベンポインティングフラックスの増加と比較的対応が良い事を示した。さらに、観測された波動強度を用いたイオン流出シミュレーションの共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FAST衛星のデータ解析を進めていく中で新たに使用可能になったイオン種を区別したイオン観測器のデータについて、特に本研究で重要視しているイオンの流出フラックスが大きいイベントについて、一部にデータの再較正が必要な可能性が示唆された。イオン質量分析なしのデータから抽出した大フラックスイオン流出イベントについて、イオン質量分析ありのデータとの整合性のチェックを行い、妥当性や再較正の必要性を検討したが、研究代表者の学内異動や、較正について大きく実働した共同研究者の出産等により、検討に遅れが生じた。現在は、米国のニューハンプシャー大学のグループとほぼ毎週継続的に議論を行い、検討を加速できる体制が整ってきている。 一方で、新たにイオンを加速する波動に着目した解析を進め、過去のイオン流出のシミュレーション研究等で想定していたよりもかなり強い電場の広帯域波動が観測されることを明らかにしつつあり、その強力な波動によるイオン加速をシミュレーションに適用した共同研究を開始して、急ピッチで進めている。ただし、波動の解析に用いた電場データについても衛星チーム側で新しく処理したデータセットの公開が予定されており、それが公開され次第、解析プログラムを再度動かして波動関連の解析の全体をやり直す必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、FAST衛星の質量分析ありのデータの信頼性の確認について、較正を主導した共同研究者が夏季に日本に滞在する期間の間に目途をつけ、波動データの解析と合わせ、既存のデータで可能な限界まで大フラックスのイベントの発生の必要条件や大フラックスのイオンを流出させる物理過程の理解を進展させる。 波動の解析に用いた電場データについて、衛星チーム側で新しく処理したデータセットの公開が予定されており、それが公開され次第、波動関連の解析プログラムを再度動かして波動関連の解析の全体をやり直す。 加えて、FAST衛星で観測された程度の波動がどの程度のイオン流出フラックスを生じることが期待されるかの評価を行うことでイオン流出フラックスを決める物理過程の理解を進展させる。非常に波動強度が大きいということは、短時間でのイオンの加速が可能であることを示唆している。一方、イオンは加速されても短時間では長距離を移動できないため、電離圏から高高度まで密度分布を加速が起きている時間内で大きく変えることは難しい。これは、加速前のイオンの高度分布が加速イオンの分布等に大きく影響を与えることが期待できるともいえる。特にO+などの重イオンの高度分布は太陽活動度や季節(太陽天頂角)によって大きく影響を受けると考えられるため、それらによる初期分布の違いと強力な波動加速の組み合わせで、観測されるようなイオン流出を再現できるか示せるように波動加速が考慮できるイオン流出モデルを用いたシミュレーションの共同研究も進める。
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