研究課題
若手研究
地球や火星などの岩石惑星の環境進化を論じる上で、水の挙動の理解は欠かせない。惑星は、いつ・どこから・どれほどの水を獲得したのだろうか?この手がかりを与えるのが、かつての微惑星~原始惑星の欠片である小天体由来の隕石群である。本研究では、岩石惑星が水を獲得するプロセスの解明を目的に、隕石の揮発性元素安定同位体比と放射年代記録を利用する。複数種類の隕石群について、高精度酸素同位体分析、局所年代分析、局所塩素・水素同位体分析を組み合わせ、母天体の水の記録の復元を目指す。
かつての微惑星や原始惑星を起源とする隕石群には、岩石惑星(地球型惑星)形成領域の様々な記録が残されている。本研究では、岩石惑星の揮発性物質獲得と表層環境の進化過程を明らかにすることを目的に、小惑星ベスタなどを起源とする複数種類の分化隕石を対象に、二次イオン質量分析計ナノシムスによる局所放射年代測定と、岩石組織観察および安定同位体分析を実施した。これまでの研究から、小惑星帯における主要な天体衝突イベントが比較的初期に集中していたことが分かり、岩石惑星領域への物質移動・供給は、遅くとも41.5億年前までに完了していたことが示された。
小惑星起源の試料には、地球や月以前の記録が残されている。従来、月試料などの同位体記録から、地球を含む岩石惑星領域での天体衝突は約39億年前(形成から6-7億年後)に急激に増加したと予想されてきた。本研究から、小惑星帯における主要な天体衝突は約45億―41.5億年前という比較的早い段階で完了していたことが示され、岩石惑星領域における物質移動と供給時期について新たな知見が得られた。太古の天体衝突と物質供給は、地球や火星における原始海洋の形成や最古の生命誕生にも関わる問題である。本研究の成果は、地球を始めとする惑星古環境進化の解明に貢献すると期待される。
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