研究課題/領域番号 |
19K14799
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 気象庁気象研究所 (2022-2023) 国立研究開発法人理化学研究所 (2019-2021) |
研究代表者 |
末木 健太 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (50802980)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 積乱雲 / 環境場 / Warm Bubble実験 / エントレインメントを考慮したCAPE / 鉛直シア / 竜巻 / 降水セル抽出 / 竜巻を伴う台風 / 台風強度 / 温帯低気圧化 / Warm bubble実験 / 台風 / 数値実験 / エントレインメント / E-CAPE / スーパーセル |
研究開始時の研究の概要 |
熱帯の海上で発生・発達した台風が北上し、中緯度の偏西風帯に接近すると、前線を伴う温帯低気圧へと急速に構造変化する。台風が温帯低気圧化(温低化)する際には、台風渦と偏西風ジェットが重なることにより特徴的な風速場が形成され、強い竜巻の発生リスクが格段に高まる。本研究では、温低化する台風とそれに伴う竜巻を理想化した条件下で再現する数値シミュレーションを行い、温低化の条件を系統的に変化させる感度実験により、台風の温低化に伴う竜巻の発生リスクの定量化を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度に引き続き、水平一様な環境場中で地上付近に置いたWarm Bubbleから積乱雲を発生させる理想数値実験の手法であるWarm Bubble実験を対象に、環境場の気温・水蒸気・水平風プロファイルに関するパラメータを変化させる大規模なパラメータスイープ実験を実施した結果について解析を進めた。本研究では、環境場の指標として可降水量(PW)とエントレインメントを考慮した対流有効位置エネルギー(E-CAPE)に着目し、PWを横軸、E-CAPEを縦軸とする空間上で湿潤対流に伴う降水量の環境場依存性を示した。また、PW/E-CAPE空間上における降水量分布が、水平風の鉛直シアの強さ・深さの変化に応じてどのように変化するのかを定量化した。実験の結果、PWがほぼ同じ条件下でも、E-CAPEの大きさに応じて降雨量が数桁のオーダーで変化することが分かった。鉛直シアについては、E-CAPEの大きさに応じて、積乱雲の発達を抑制もすれば促進もする。鉛直シアによる降水量への影響が抑制から促進に切り替わるE-CAPEの閾値は、鉛直シアが強くなるにつれて小さな値へとシフトした。鉛直シア層の深さについては、深さが3 kmから6 kmに増加すると、鉛直シアの影響は抑制・促進ともにより顕著になることも分かった。また本研究では、降水量の時系列に基づき積乱雲の発達を「成長モード」、「減衰モード」、「中間モード」などと分類し、鉛直シアが強く鉛直シア層の深さが深くなるほど、「成長モード」や「中間モード」となる環境場が増加し、降水量の増加に寄与することを示した。一連の結果についてまとめた論文を日本気象学会の英文レター誌SOLAに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、積乱雲の発達の環境場依存性を調査するWarm Bubble実験の大規模なパラメータスイープの結果を論文としてまとめ、日本気象学会の英文レター誌SOLAに投稿した。投稿した論文は現在査読中であるが、研究内容を論文としてまとめることができ、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Warm Bubble実験による積乱雲の環境場依存性の調査を拡張し、竜巻を生ずる特殊な回転積乱雲スーパーセルが生じうる、鉛直シアがより強い風速プロファイル下での実験を実施し、降水量に加えて積乱雲下層での鉛直渦度の強さについてもその環境場依存性を調査する。また、レーダーデータに基づく降水セルの抽出・追跡手法に基づき、台風に伴って竜巻が発生した事例における環境風と降水セルの移動ベクトルとの関係を調べ、竜巻が生じなかった事例との比較を行う。
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