研究課題/領域番号 |
19K15725
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岸田 康平 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (80816843)
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研究期間 (年度) |
2021-11-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 遺伝子の水平伝播 / プラスミド / 接合伝達 / 薬剤耐性菌 / 水平伝播 / T4SS |
研究開始時の研究の概要 |
プラスミドの接合伝達は細菌の遺伝子水平伝播の主役であり、人類にとって有害あるいは有益な細菌の出現に深く関わる。本研究では、接合伝達を阻害または促進する化合物を同定し、有害細菌の出現抑制や有益細菌の効率的育種を可能にすることを目的とした。現存する接合伝達装置の共通性質を有す祖先型接合伝達装置を構築してその阻害・促進化合物を同定する。本化合物は実在する多くの接合伝達装置に作用すると考えられるが、実際に有害細菌の出現抑制と有益細菌の効率的育種へ寄与するかを検討し、接合伝達阻害・促進化合物の有効性を提示する。
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研究実績の概要 |
プラスミドの接合伝達は、薬剤耐性菌といった有害細菌と難分解性化合物分解細菌などの有用細菌の双方の出現に関与していることが明らかとなっている。本研究はこの細菌進化に深く関与しているプラスミドの接合伝達を人為的に阻害・促進する技術の開発を目的としている。これまでに、Pseduomonas属細菌の有すナフタレン分解プラスミドの派生体の接合伝達頻度を100倍程度増加させる複数遺伝子を見出した。これら遺伝子産物はDNA結合能を有していることがアノテーション情報から推定されており、実際にプラスミド上の特定のDNA領域に結合していることを実験的示し、接合伝達関連遺伝子の転写活性化やプラスミド自体のコピー数を増加などを介して接合伝達を促進していることが明らかとなった。一方で、未だ接合伝達を促進するメカニズムが不明な遺伝子も存在する。また、Acidovorax属細菌のICEの接合伝達を促進する転写制御因子TraRの機能解析にも携わった。 近年の生成AIの飛躍的発展により、ある特定のタンパク質に特異的に結合するペプチドを推定可能となった。加えて、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析で、接合伝達性プラスミドが構築するIV型分泌装置の構造が高分解能で明らかとなった。我々はこのペプチド推定技術とIV型分泌装置の構造情報を基に、接合伝達関連タンパク質に結合することで接合伝達を阻害するペプチド(阻害ペプチド)を10種程度推定した。これらペプチドを発現するプラスミドを人口遺伝子合成し、実際に阻害ペプチドとして機能するかを現在検証中である。また、特定のDNA領域に結合するペプチドを推定する生成AI技術も発展してきており、この技術を用いて接合伝達開始配列oriTに結合するペプチドを生成した。このペプチドが阻害ペプチドと機能するかを現在検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接合伝達を阻害する因子の同定には至っていないが、接合伝達を促進する遺伝子を見出すことができた。また、阻害する因子を同定するアプローチの確立することはできた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) いくつかの接合伝達を促進する遺伝子はどのようなメカニズムで接合伝達の促進に関与しているかは不明である。これを明らかにするために、これら遺伝子産物の構造解析から機能を推定し、実験的にメカニズムを解明する。 (2)阻害ペプチドを用いて実際に接合伝達が阻害されるのかを検討する。また、実際に阻害ペプチドがターゲットの接合伝達関連タンパク質に結合するかをプルダウンアッセイやbacterial two hybried法で示す。また、新たな阻害ペプチドの推定や接合伝達に必須なDNA領域に結合することで接合伝達を阻害するペプチドを同定する。 (3)接合伝達の祖先型の構築を祖先型推定法で実施する。特にATPaseを標的とし、in vitroでATPase活性を阻害する化合物の同定を実施する。
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