研究課題
若手研究
本研究では、「ビフィズスフローラ形成のヒトにおける生理的意義」を、脂質代謝を基軸として理解することを目的とする。近年、人乳にも含まれるリノール酸の水和物であるHYAに腸管バリア機能を高める作用があることなどが明らかとなった。申請者は母乳および乳児糞便を解析し、乳児糞便にのみHYAが検出されること、ビフィズス菌がin vitroでHYA産生能を持つことを確認した。今後、多数の母子ペアサンプルの分析とビフィズスフローラの相関解析、ビフィズス菌によるHYA 産生誘導条件を探索する。その成果は、ヒトとビフィズス菌の共生・共進化を解明するのみならず、より人乳に近い調整乳の開発に繋がるであろう。
LAから変換されるHYAは、腸管バリア機能を向上させる機能が示されている。LAは母乳脂質にも多く含まれていることから、乳児糞便脂質の脂肪酸組成分析を行い、HYAが含まれることを示した。また、腸内細菌叢解析を行ったところ、母乳中LAから糞便中HYAへの変換率は、ビフィズス菌数と正相関していた。In vitro試験からも、Bifidobacteriumが確かに本変換反応を行うこと、精製酵素と遺伝子欠損株を用いて、変換酵素の活性を確認した。また、Bifidobacterium属であっても、種により変換能は大きく異なることが分かったが、乳児腸管内で多い種に関しては変換能が高い傾向が見られた。
宿主と腸内細菌の関係は、主にオミクス的アプローチから研究され、重要な知見がもたらされた。それらを基盤とし、疾病治療、健康機能食品への応用が広く期待されている。それに伴い、両者の関連を物質や遺伝子レベルのメカニズムとして説明することが求められるようになってきたが、従来のオミクス研究だけではその達成は難しい。本研究は、ビフィズス菌という特定の菌種、母乳中のLAとHYAという特定の物質に絞った解析を行うものである。これは、宿主由来物質・菌・遺伝子・機能物質というそれぞれ具体的な因子を、一連のメカニズムとして明らかにしたものであり、今後の腸内細菌研究が目指すべき新しい形を示すものである。
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