研究課題
若手研究
博物館などに収蔵されている標本及び現在の野生個体の集団遺伝解析から、絶滅危惧種の過去 (1980~2000年代) と現在 (2010年代) の遺伝的情報 (遺伝的多様性・構造) を明らかにする。こうした情報をもとに、各絶滅危惧種の保全単位 (遺伝的な撹乱を起こさずに遺伝的多様性を保持できる地理的範囲) を設定する。対象種には、近年人間活動の変化により環境が悪化している生態系 (湿原・草原) に生育する植物種を用いる予定である。標本の遺伝解析は、DNAの断片化により遺伝解析が難しかった。そのため、本研究では劣化したDNAの解析にも対応できるMIG-seq法を用いる予定である。
昨年度MIG-seqを実施したウンラン、マツナ、ハマアザミ(いずれも兵庫県レッドリストに記載される海浜生絶滅危惧植物)について、標本による過去の遺伝的多様性と現在の遺伝的多様性、また生息域外保全集団の遺伝的多様性について解明できた。これらの一連の成果は国際誌に投稿した。現在は原稿を修正中である。さらに海浜生絶滅危惧植物であるナミキソウについても、新たに国内で網羅的にサンプリング及びMIG-seqを実施し、国内における詳細な遺伝構造を明らかにした。カブトムシについては、国内のサンプリングが完了したことから、まずはミトコンドリアDNA配列の一部領域を決定した。その結果、北海道から九州まで遺伝的な分化が非常に小さいことが明らかとなった。北海道のガロアムシ目昆虫を入手する機会を得たので新規にミトコンドリアDNA配列及び核DNA配列の決定を実施した。その結果、北海道のガロアムシは本州と明確に異なり、また形態も既知種との明瞭な違いがあることが分かったことから、北海道のガロアムシ目昆虫をArctigalloisiana属とし、2種を新種記載した。また、これまでに北海道で1個体しか記録のなかったキタキイロネクイハムシが青森県から発見された。採集された個体についてミトコンドリアDNA配列及び核DNA配列を決定し、ユーラシア大陸との遺伝的な違いを明らかにした。その結果、ユーラシア大陸のキタキイロネクイハムシとの遺伝的な違いは非常に小さいことが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画では、4種について研究を遂行する予定であったが、現時点ですでに6種(サギソウ、ミヤマシロチョウ、イソチビゴミムシ、キタキイロネクイハムシ、北海道のガロアムシ属2種) については論文出版まで至り、さらに3種(ウンラン、マツナ、ハマアザミ)についても論文投稿が完了している。このように、研究遂行期間の4年目が完了した時点で、すでに6種で論文出版、3種で論文投稿、1種で遺伝解析が完了、1種でサンプリングの完了のめどがついたことから、当初の計画以上に進展していると自己評価した。
ウンラン、マツナ、ハマアザミについては、今年度中の論文の受理と出版を目指すほか、カブトムシについてもMIG-seqによる保全単位の設定を実施する。ナミキソウについては今後、生育地の景観や環境要因なども明らかにして、遺伝的多様性に影響をもたらす要因を推定する予定である。
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