研究課題/領域番号 |
19K16152
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
岡田 甫 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 外来研究員 (10835036)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 遺伝子代償 / 転写 / Mesp / エンハンサー / PSM(未分節中胚葉) / 遺伝子代償機構 / エンハンサープロモーター相互作用 / 体節 / 未分節中胚葉 / 近接遺伝子 / ゲノム構造 / 転写制御 / RNAイメージング / 非翻訳RNA |
研究開始時の研究の概要 |
生物の発生過程では遺伝子発現が精緻に制御されることが必須であるが、同時に生物には遺伝子機能が損なわれた際にも発生が適切に進行するためのセーフティネットが存在する。その一種として異なる遺伝子による機能的補填(代償性)がある。しかし、遺伝子の欠損を検知した後、どのように代償性をもつ遺伝子の発現を適切に誘導するのか、また検知してから代償的な誘導までにかかる時間については殆ど報告がない。本研究ではマウスの体節形成で重要かつ機能を補填することが既に明らかになっているMesp1/2遺伝子をモデルに、遺伝子の可視化・編集技術を組み合わせることで、代償性を持つ遺伝子の誘導される機構と時間的制約を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに明らかにした、隣接相同遺伝子間での遺伝子代償機構の検証と論文化を進めた。 昨年度までに本研究では、in vitro培養系で再現した未分節中胚葉を利用して、染色体上で隣接して存在するMesp1,Mesp2遺伝子をモデルとして、これまで報告のあるNMD依存的な遺伝子代償機構とは異なる新規の遺伝子代償機構を明らかにした。その実体は、Mesp2のコード領域の欠損により、本来Mesp2の発現を制御するエンハンサーが、隣接する相同遺伝子Mesp1に標的を変更し、その発現を誘導することであった。 興味深いことに、Mesp1が発現が上昇する際には、Mesp2のもう一つの隣接遺伝子であるAnpepの発現も上昇していた。このことから、Mesp2エンハンサーは、Mesp1を特異的に選択するのではなく、本来の標的を失ったエンハンサーが近接する遺伝子に影響を与える、ということを示唆していた。そこで研究代表者は、Mesp2エンハンサーの標的変更には、新たにエンハンサーと近接遺伝子間でゲノムの物理的な相互作用が誘導されるのではないかと考えた。しかしながら、Mesp2エンハンサーとMesp1プロモーターおよびAnpepプロモーターは、Mesp2の欠損に関わらず、物理的に相互作用していた。この物理的相互作用は、Mesp2が発現を開始する未分節中胚葉のステージで形成されていた。これらの結果はMesp2エンハンサーとMesp1プロモーターの相互作用をこの遺伝子代償機構が利用していることを示唆している。 本研究成果は、査読前論文としてbioAxivで発表しており(H. Okada and Y. Saga, 2021)、現在学術雑誌で査読中である。
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