研究課題/領域番号 |
19K16217
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
武藤 望生 東海大学, 生物学部, 准教授 (50724267)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 生殖隔離 / メバル属 / 交雑 / 生活史 / ゲノム / 生態 / MIG-seq / 繁殖期 / 地理的変異 / 種分化 / 鉛直分布 / 繁殖行動 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の集団間に,生理・生態・行動の違いなどの要因にもとづく生殖隔離が成立することにより,新種が誕生する.この種分化過程で,どの要因がどれくらい生殖隔離に寄与するか?それらの要因を進化させるものはなにか?こうした問いを追究する研究が様々な生物群で行われ,生物学の重要課題である「種はいかにして分化するか」に対する一定の回答を提示してきた.しかし,海水魚を対象とした研究は極めて少ない.本研究は,種分化の途上にある海水魚「キツネメバル」と「タヌキメバル」の生理・生態・行動的差異を分析し,両種の交配を何がどの程度妨げているか明らかにする.また,それらの隔離要因が進化した背景を遺伝解析もまじえて推測する.
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研究実績の概要 |
本年度は,本州中部日本海沿岸,同北部太平洋沿岸,および北海道日本海沿岸の3地域からそれぞれ採集した標本の遺伝解析を中心に行い,ほぼすべての標本から遺伝データを取得した.さらに,取得したデータを用いて集団遺伝解析を予備的に実施した.その結果本研究開始時点での予測とは異なり,北海道日本海沿岸の標本はキツネメバルとタヌキメバルのいずれとも遺伝的に異なる第三の集団(種)であることが判明した.この種のゲノムは全体的にキツネメバルとタヌキメバルの中間的な特徴をもつ一方で,一部の領域には両種との相違がみられた.したがって両種の交雑に由来する種であると推定された.一方,本州北部太平洋沿岸の標本には上記3種およびそれらの交雑個体が,本州中部日本海沿岸にはキツネメバルとタヌキメバルだけが含まれていた. 標本の年齢-成長関係および生殖腺の発達を予備的に解析した結果,標本の採集地点と対応した地理的傾向がみられた.これは種によって生活史特性が異なることを反映していると思われる.この推測を検証するために,今後は遺伝解析によって識別した種ごとに生活史特性を解析していく予定である. テスト用サンプルを用いて耳石薄片を作成し,酸素安定同位体比分析に適した薄片が作成できることを確認した.また,上記遺伝解析の結果をもとにして,酸素安定同位体比分析に供する標本を選定した. 上記と並行して,キツネメバル種群の近縁グループであるシマゾイ-クロソイの間の生殖隔離機構に関する論文をJournal of Heredityに投稿し,受理された.また,同じく近縁グループであるヤナギノマイ-ガヤモドキの種分化過程に関する論文をBiological Journal of the Linnean Societyに投稿し,受理・出版された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により標本採集が予定通り実施できず,研究計画がすべて後ろ倒しで進行している.一方,キツネメバル種群の近縁グループを対象とした解析は,当初はキツネメバル種群との比較用を目的としていたが,予期せず単独 で重要な結果が得られたことから,2編の論文を公開することができた.以上を総合して「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
不足している遺伝データを取得し,全標本を遺伝的に識別する.また,耳石の酸素同位体比分析を実施して回遊履歴を推定する.種ごとに生活史と回遊履歴を整理して,生殖隔離との関連を議論し,論文化して投稿する.
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