研究課題
若手研究
農業被害増加に伴う野生動物への順応的管理の要請を背景として、管理施策の強化がシカの生態におよぼした変化を解明するために研究を立案した。防護柵や有害鳥獣捕獲等の施策が本格化する2008年以前と、2018年以降に採取されたシカの歯の成分を抽出して同位体分析をおこなう。具体的には、コラーゲンの炭素窒素安定同位体分析、エナメル質やセメント質に含まれる炭酸塩の炭素酸素安定同位体分析によって、シカの農作物利用度と分布域・生息地移動の情報を取得し、施策強化前後を比較して、シカ分布域の変化と農作物度増大の関係を検討する。研究を通じて、捕獲などの短期目標の先にある、野生動物の適切な管理に向けた視座を提案する。
窒素・炭素・酸素の安定同位体分析を、農作物被害を引き起こすシカの分布とその変遷を明らかにする手法へ応用することを目的として、大阪府北摂地域で捕獲されたシカから得た試料の分析を実施した。シカのエサ植物の代表として野生植物であるササ・栽培作物であるイネの同位体組成を分析し、シカ捕獲地域におけるこれらエサ植物の同位体の分布を表す地図を作成した。耕作地付近で捕獲されたシカは高い窒素同位体比を示し、シカの窒素同位体比が農作物利用の指標となることが確認された。研究資料として保存されていたシカの歯から抽出した骨コラーゲンの分析によって、2008年以前の過去に遡って農作物加害の実相を明らかにした。
農業被害の増加に伴う野生動物の効果的な管理・防除施策に対する要請を背景として、安定同位体分析による近過去のシカと現在のシカの生態を、栽培作物の利用率に着目して比較する手法を開発した。本手法により、シカが大きく個体数密度を増やす前後における食性の違いを共通手法により比較することや、客観的な指標に基づいてシカによる農作物被害の実態を評価することが可能となった。今後、地域ごとの防除実施状況などの情報と組み合わせることにより、空間明示的な防除施策の立案に活用していくことが期待される。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 5件)
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