研究課題
若手研究
霊長類は果実食、葉食、昆虫食など、種によって食性が多様化しているのが特徴である。こうした食性の適応放散は、哺乳類全体でみられる様式の縮図ともいえる。たとえば葉を主食とするコロブス類では、ウシやヒツジ、ナマケモノ、カンガルーなどで見られる葉や草を消化する前胃の発達が見られる。本研究の目的は、こうした霊長類と非霊長類哺乳類で見られる形態・生理レベルでの採食適応の収斂のメカニズムを、ゲノム・メタゲノム適応の点から明らかにする。たとえば味覚受容体遺伝子ファミリーの分子進化(ゲノム適応)、腸内細菌叢の豊富度や構成の進化(メタゲノム適応)に着目する。
動物の食性は非常に多様である。古典的な食性分類である肉食、雑食、草食に加え、葉食、果実食、樹液食、花蜜食など、多様な採食資源に対する動物種特異的な適応がある。さまざまな動物分類群の中でも、約500種いる霊長類にはこれらのすべての食性を有する種が属しており、採食適応放散の重要なモデルである。同じ食性を収斂進化させている霊長類と非霊長類哺乳類のゲノム・メタゲノム適応の解析をおこなった。例えば樹液食をするスローロリス(霊長類)とオポッサム(有袋類)の腸内細菌マイクロバイオームや、葉食をするコロブス(霊長類)とコアラ(有袋類)の味覚受容体遺伝子を比較し、共通方向への進化メカニズムがあることを発見した。
哺乳類の味覚や腸内細菌は、その種が消化・吸収・代謝できる食物に適している必要があり、実際そのように適応進化させてきた。各大陸に存在する森や草原や海で、異なる哺乳類が食性を収斂させている。味覚や腸内細菌は、それぞれゲノムやメタゲノムという形で分析することができ、今回、分子レベルでの収斂メカニズムを発見した。いまや4分の1の哺乳類種が絶滅の危機に瀕している中、ただ個体を保護するだけではなく、適応したゲノムやメタゲノムに基づいて、適応している森や草原といった生息地を保全する必要がある。そうした新しい形の「保全ゲノミクス」の実践を提供する上でも意義が高い研究となった。
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