研究課題/領域番号 |
19K16284
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 早稲田大学 (2020) 東北大学 (2019) |
研究代表者 |
田中 雅史 早稲田大学, 文学学術院, 専任講師 (20835128)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | キンカチョウ / 模倣学習 / 中脳水道周囲灰白質 / ドーパミン / 文化的伝承 / 歌鳥 / 鳴禽 / ソングバード / 大脳皮質運動野 / ドーパミン系 |
研究開始時の研究の概要 |
模倣は、規範的モデルとなる他者の行動を認識・記憶し、自らの行動で正確に再現することを可能にする極めて効率的な学習能力であるが、ヒトのような優れた模倣能力をもつ動物は珍しく、模倣学習を駆動するメカニズムは十分に解明されていない。そこで本研究は、キンカチョウなどのスズメ亜目の鳥が正確に歌を模倣する能力をもつことを利用し、申請者が最近発見した中脳から皮質の感覚運動野へのドーパミン出力が模倣を促進するという成果を踏まえ、関連する神経回路とその機能を同定することで、模倣学習の神経機構、特に、社会的結合や価値判断など、模倣対象の選択にかかわる情報処理を担う神経機構を明らかにすることを目指す。
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研究成果の概要 |
本研究では、優れた模倣能力をもつスズメ亜目の鳥の一種キンカチョウを用い、歌の模倣対象を選択する神経メカニズムを探究している。本研究では、歌の模倣効率や、その音響特性の分析を行うプログラムを新規に開発し、鳥の歌のリズムの安定性が、世代を超えて伝わる文化的形質であり、そのオシレーター機構によって維持される時間的特性は、人の音楽的な歌とも共通していることが示唆された。リズム模倣の神経基盤として、感覚運動野HVCでも類似のリズム性神経活動を記録でき、HVCを介して模倣学習を駆動できる中脳水道周囲灰白質へは、扁桃体などが出力していることがわかったため、現在これらの神経回路の機能の同定を進めている。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究によって、キンカチョウの模倣学習を促進できる要因として、テンポの安定性という新しい特性を同定できた。とりわけ、その時間的特性が、以前より類似性が指摘されていたヒトの言語より、むしろ音楽に近い一面をもつことは興味深い発見であった。キンカチョウなどスズメ亜目の鳥は、ヒトの発話学習と同様、幼少期に音声の模倣学習を行って人の芸術にも似た美しい歌をさえずるようになるが、その一方、群れの特定の個体と、長期間、強固な社会的結合を維持するようになる。こうした文化的・社会的行動がどのように成熟するのか、今後も、鳥とヒトが共有する運動関連領野への密なドーパミン投射を中心に、神経基盤を探求する予定である。
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