研究課題/領域番号 |
19K16304
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
梶山 十和子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (00757130)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 性フェロモン / 嗅覚 / 嗅上皮 / 内分泌 / 神経ペプチド / アトラス / データベース / 視床下部 / 性行動 / 生殖内分泌 / 生殖 / 神経回路 |
研究開始時の研究の概要 |
動物の生存のためには、外界の情報により体内の状態や行動を変化させることが不可欠である。とりわけ生殖活動においては多くの動物種で性フェロモンの情報が行動や内分泌系の制御に大きな役割を持つ。しかし、性フェロモンがどのような神経回路を介して内分泌・行動の変化をもたらすのかについては断片的にしか明らかになっていない。本研究は、脳が比較的小さいため脳全体の神経活動の同時的解析ができる、ノックアウトやトランスジェニックが容易に作出可能であるというメリットを持つゼブラフィッシュをモデルとして用い、性フェロモンの嗅覚入力から行動発現・内分泌変化という出力に至る一連の神経回路を包括的に解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
(1)嗅覚受容体の同定 ゼブラフィッシュにおいて性フェロモン17,20β-PSには二つの受容体候補遺伝子があり、その二つが同一の嗅細胞において共発現することを示唆するデータが得られていた。本年度は嗅上皮におけるシングルセルRNAシークエンス解析により、性フェロモン受容体遺伝子の発現を詳細に解析した。その結果、二つの性フェロモン受容体候補遺伝子が実際に同一の細胞に発現していることが明らかになった。 (2)行動・内分泌の変化の同定 前年度までに作出した性フェロモン受容体ノックアウトフィッシュ複数系統について育成を行った。また、性フェロモン刺激によるゼブラフィッシュの内分泌の変化を検出するための実験系の構築に取り組んだ。具体的には、下垂体における性腺刺激ホルモンのReal-time PCRによる定量、血中の性ステロイドホルモンの質量分析による定量の方法を検討した。 (3)神経回路の解明 性フェロモンにより活性化されるニューロン群の性質を調べるためには、目的のニューロン群に発現するマーカー遺伝子の同定が重要である。しかし、ゼブラフィッシュにおいては、マーカー遺伝子の探索に有用な、成魚の脳における遺伝子発現アトラスが整備されていない。そこで、ゼブラフィッシュの成魚脳における38種類の神経ペプチドおよび、神経伝達物質マーカー遺伝子の発現場所を網羅的に可視化し、断面ごとにまとめた。さらにこのデータをもとに、これまで一つの神経核とされていた領域内に、神経ペプチドの発現が異なる2つ以上の領域がある箇所を複数見出し、神経亜核として提案した。また、ゼブラフィッシュ視床下部の神経ペプチド発現をマウスの発現と比較し、類似した発現パターンを示す神経核を複数見出した。以上の内容を論文にまとめ、投稿、プレプリントの公開を行った。また、結果の全スライドグラスのデジタルデータを参照しやすいデータベースとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、嗅上皮のシングルセルRNAシークエンスデータの活用によりこれまで確証が得られなかった嗅覚受容体の共発現について確かめることができた。また、神経ペプチドの発現アトラスの論文を完成させ投稿することができ、データベースについても共同研究によりスムーズに構築・公開することができたため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度となるため、性フェロモン刺激による行動・内分泌の変化を定量することに集中して取り組む。これまで、ノックアウトフィッシュの性行動解析において変化を見出すことができなかったため、内分泌の変化の測定に切り替えることで、ゼブラフィッシュにおける性フェロモンの機能を解明したい。内分泌の変化に関しては、これまでは精液量の測定を試みていたが、ばらつきが大きく有意な差を検出することができなかったため、内分泌カスケードのより上流に当たるLHや性ステロイドホルモンの定量へと方法を変更する。何らかの機能を見出すことができれば、これまでに取得したデータと合わせて論文の作成へと進みたい。
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