研究課題
若手研究
オートファジーは真核細胞に保存された基本的な細胞内分解機構である。オートファジーが開始されると、分解対象物を取り囲む隔離膜が出現する。隔離膜の形成には前オートファゴソーム構造体が重要な役割を果たしている。酵母においては、その足場は5種類のタンパク質から成る高次多量体構造によって形成されるが、これが液滴の性質を有することが最近見出された。この液滴についての構造的な理解は、オートファジー開始のメカニズムの解明のために重要である。本研究は、ナノメートルレベルでリアルタイム観察が可能な高速原子間力顕微鏡を用いることにより、細胞内で生じる液滴を直接観察して構造及びダイナミクスを明らかにすることを目指す。
オートファジーは、細胞内のタンパク質や細胞内小器官、異物を分解する仕組みの一つである。オートファジーが開始されると隔離膜が出現し、膜が伸長して分解対象物を取り囲み、オートファゴソームを形成する。本研究では、オートファゴソーム形成に働く個々のタンパク質とともに、これらが液―液相分離して形成する液滴の構造を高速原子間力顕微鏡(AFM)によって観察した。また、アミノ酸残基の変異や液滴構成因子の有無によって、特定の液滴の性質や形状が変化することを見出した。
本研究では、酵母または哺乳類由来のオートファジーに関連する複数のタンパク質について、結晶構造解析や電子顕微鏡では画像化が困難な天然変性領域を含め、高速AFMによりイメージングを行った。また、性質や形状の異なる液滴について、その表面構造の違いを高速AFMによりイメージングした。細胞内の液―液相分離に伴う液滴の形成と機能に関しては、広く生化学、分子生物学、生物物理学的に重要なテーマであると同時に、液の性質が保たれた「液滴」から「凝集状態」や「線維」状態への変性は神経変性疾患とも関連することから、本研究を通じて得られた成果は、医薬上重要な知見を提供するものであると考える。
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