研究課題
若手研究
本研究は、大腸がんの発生と悪性化のメカニズムについて、プロスタグランジンE2が作用するE型プロスタノイド(EP)4受容体下流の大腸がん発生因子、およびEP3受容体下流のがん悪性化因子を明らかとし、その制御メカニズムの解明を目指す。そのために、分子生物学的手法とバイオインフォマティクス的手法を連携させ、効率的な因子の同定を試みる。本研究を遂行することで、大腸がんの発生と悪性化を統括して説明するシステムを提唱し、大腸がんの発生を予防する、あるいは悪性化を抑制するための、具体的な治療標的が明らかになるものと期待される。
大腸がんを促進するとされるprostaglandin E2(PGE2)は、E型プロスタノイド(EP)受容体サブタイプ1(EP1)からサブタイプ4(EP4)に結合する。本研究により、実際のヒト大腸がん組織にはEP受容体高発現クラスターが存在することが明らかとなり、この内EP3受容体高発現クラスターは転移性がんである可能性が明らかとなった。一方EP4受容体の刺激は、細胞内代謝の変化や免疫抑制因子の発現誘導などを引き起こし、がんの発生に関与する可能性が考えられた。さらに、EP4受容体とEP2受容体の活性比較により、受容体刺激時に活性化する細胞内シグナル系が明確に異なることも明らかとした。
PGE2は大腸がんマーカーと考えられてきたが、実際のヒト大腸がん細胞は、EP受容体の発現パターンによってPGE2刺激時の細胞内シグナル応答や遺伝子応答が違い、がんの病毒性や性質が異なる可能性が高い。本研究で明らかとなったEP4受容体およびEP3受容体の下流因子は、これらの型のがんに対する精密医療を考える際の、具体的な治療標的となる可能性がある。今後、本研究で明らかとなった因子を中心に、各受容体下流の細胞内シグナルを詳細に解明してゆくことで、大腸がんの発生や悪性化段階におけるEP受容体の役割を解明できるものと期待される。
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