研究実績の概要 |
本研究では, ジメチルセレコキシブ(DM-C)の, 線維芽細胞から筋線維芽細胞への転換とこれに伴う心臓線維化の進行に着目し, in vivoおよびin vitroでDM-Cの心臓線維化抑制効果および線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化抑制効果の検討を行った.in vivo実験:C57BL/6マウスを用い,冷凍焼灼心筋梗塞(MI)モデルを作成し,DM-C(1000 ppm)またはvehicleはMI作製3日前から摂餌投与した.MI作製後,4週間経時的に心エコーで心機能を評価し, 4週間後に摘出心断面の線維化面積を評価した. また,摘出心断面のα smooth muscle actin (αSMA)の免疫染色を行い, MI後の線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化に対するDM-Cの効果を検討した. DM-C投与群では,vehicle投与群と比較し左室収縮力の有意な低下抑制が,また,MI作製28日後の摘出心断面のMT陽性部位の有意な減少およびMI作製3日後の摘出心断面のαSMA陽性部位と梗塞部位のαSMA発現の有意な減少が確認された.in vitro 実験:SDラット由来皮膚線維芽細胞に対し,DM-C前処置後にtransforming growth factor-β1(TGF-β1)刺激を行い,蛋白発現・リン酸化についてウェスタンブロッティング法にて評価した. TGF-β1刺激により筋線維芽細胞への分化が誘導されαSMAの発現が増加するが,DM-CはαSMAの発現増加を有意に抑制した.また,DM-C処置線維芽細胞ではAkt,GSK-3βおよびSmad2/3のリン酸化が抑制されていた. 上記結果から, DM-Cは,GSK-3βの活性化によるTGF-β/Smadシグナルの抑制に基づく線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化抑制作用とこれによる心臓リモデリング抑制効果を有することが確認された.
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