研究課題
若手研究
本研究では、医薬領域において小腸吸収性評価に汎用されている培養ヒト腸由来細胞を活用し、多様な化合物の消化管吸収性を評価することで、吸収性に及ぼす化合物側の変動要因について解析し、得られた情報を生理学的薬物動態モデルに還元することで、吸収過程を精緻化した生理学的薬物動態モデルを開発すること、さらに、それを用いた化学物質経口投与後の肝毒性発現リスクの新規評価法の確立を目指す。
ヒト腸由来であるCaco-2細胞を用いて化学物質のin vitro消化管膜透過性と肝毒性発現リスクの関連性を調査した。化学物質の肝無作用量は、Caco-2細胞単層膜を介した膜透過係数値と有意な関連を示し、消化管膜透過性が肝臓毒性発現を規定する因子のひとつであることが示唆された。化学物質の肝最小作用量は肝臓に着目した簡易な生理学的薬物動態モデルにより記述された推定肝臓中濃度と有意な相関を示し、化学物質の肝毒性発現が体内動態と密接な関係にあることが示唆された。市販ソフトウェアで取得可能なin silico分子記述子を用い推定した化学物質の動態パラメータおよび体内動態は、実際の値を精度よく再現した。
工業用に生産される化学物質のヒトに対するリスクは、化審法に従い実験動物を用いた反復経口投与による毒性試験の結果から種差や個人差を補正した値にて評価されている。しかし、化学物質の投与後、毒性発現に至るまでの体内動態はほとんど考慮されていない。一方、動物愛護やコストの削減の観点から、化学物質の毒性を評価し得る代替法に関する研究が広く行われている。本課題では、化学物質が生体に吸収される過程や、生体内でどのような運命を辿るかに着目した、新しい毒性評価方法に関する研究を行った。本研究で得られた知見は、従来の動物実験に取って代わる毒性評価手法開発の基盤情報となりうる極めて有意義なものである。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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