研究課題
若手研究
ミトコンドリアは個体の寿命、臓器の機能を維持する上で非常に重要な細胞内小器官である。所属研究室はミトコンドリアに局在するユビキチンリガーゼMITOLを発見した。心臓におけるMITOLの機能を解析したところ、ミトコンドリア動態が組織老化の基盤を制御している可能性を見出した。本研究は、心臓におけるMITOLの存在意義を解明し、『老化』の基盤メカニズムを明らかにすることを目的とする。具体的には、心臓におけるMITOLの重要性と、生理的・病的老化にともなうMITOLの運命・機能の解析から、心臓の組織老化を中心的に駆動するミトコンドリア動態の存在意義とその分子機構を明らかにする。
ミトコンドリアは分裂と融合を通じて形態を調節し、生命の機能を支えている。過剰なミトコンドリア分裂はミトコンドリアの機能障害を引き起こし、細胞を損傷する。本研究は、ミトコンドリア内ユビキチンリガーゼMITOLが、ミトコンドリア分裂因子Drp1の分解を促進して形態を制御することを明らかにした。MITOLを心筋特異的に欠損させたマウスでは、心臓老化の徴候が見られた。また、MITOLの発現低下による細胞の老化は、Drp1の阻害で回復した。これらの結果から、MITOLの機能低下がミトコンドリアの形態異常を引き起こし老化を促進する可能性が示され、ミトコンドリアの形態調節と老化メカニズムに新たな洞察を得た。
超高齢化社会の到来により加齢性疾患の根治が大きな問題となっている。哺乳類の老化の基本メカニズムは未だ不明瞭なところが多く、これらを生物学的根拠に基づいて明らかにし、老化回避の方策を開発することが必要である。本研究では「生理的老化」と「病的老化」の双方において、新しくミトコンドリアユビキチンリガーゼMITOLの機能低下がその上流に存在することを示した。また、ミトコンドリア形態調節がこれらの老化基盤を作ることを明らかにした。この成果は、新規にMITOLという分子が形態調節を通じて組織老化に関与すること、ミトコンドリアの形態異常は老化の病態基盤である可能性を示唆することに繋がり有益な知見となりうる。
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