研究課題
若手研究
甲状腺乳頭癌は一般的には予後良好な疾患であるが、一部の症例に再発、転移をきたすため、そのポテンシャルを有する症例の拾い上げが重要である。予後を規定する有力な因子としてBRAF変異とTERT promoter変異を二つ持つ腫瘍は予後が悪いことが報告された。本研究ではこれらの分子マーカーと形態学的形質との関係を明らかにし、日常の甲状腺がん病理診断学に汎用できる高悪性度の組織像を明らかにする。日本人とカザフスタン人の甲状腺がんを同一基準で比較することで、ヨード摂取量や人種の違いによる甲状腺がんの組織像の多様性による影響も評価する。分子異常をエビデンスとした高リスク乳頭がんの形態学的特徴を定義づける。
甲状腺乳頭癌は予後良好な疾患であるが、一部の症例に再発、転移をきたすため、その症例の拾い上げが重要である。Ki-67発現やTERT promoter変異が予後を規定する有力な因子として報告された。本研究は342例の切除乳頭癌を対象に、これらの分子マーカーと臨床病理学的因子、特に形態学的形質との関係を明らかにした。結果として BRAF変異とTERT promoter変異との重変異の頻度はKi-67標識率の高値、高細胞成分、desmoplasiaを背景とするhobnail成分、好酸性細胞成分を伴う乳頭癌で有意に高率であることが判明した。これらは組織学的予後不良因子であることを示唆している。
甲状腺癌の90%を占める乳頭癌の大部分は予後良好であり、甲状腺癌の場合、早期発見と早期治療は予後の改善に寄与しないことが明らかになっている。甲状腺癌の過剰診断や過剰治療(切除や放射性ヨード内照射療法)を抑制し、最適化するためには予後不良指標の同定が必要である。現在、Ki-67標識率やBRAF変異およびTERT promoter変異が予後を規定する有力な因子として報告されているが、一般的な病理検査室で遺伝子変異解析を日常的に行うことは困難である。本研究成果はこれらの分子異常をエヒデンスに、乳頭癌の組織像を特徴付け、日常の甲状腺がん病理診断学に汎用できる高悪性度の組織像を明らかにした。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Front Endocrinol (Lausanne)
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