研究課題
若手研究
多くの組織において固有の幹細胞が機能細胞を供給することにより恒常性が維持され、何らかの原因による恒常性維持システムの破綻は個体の死へ繋がる。その過程で各組織は老化形質を獲得するが、老化システムや実体はほとんど理解されていない。申請者らは最近、加齢毛包では毛包幹細胞や色素幹細胞は自己複製を行わず異所性に分化細胞へと運命転換することで脱毛や白髪に至ることを明らかにし、「幹細胞の制御機構の破綻」が老化形質獲得の一端であることを示した。本研究では、マウス毛包・皮膚をモデルとして老化形質獲得の要因とそのメカニズムの理解を目的とする。
表皮の生理的な老化メカニズムの理解のために、マウス表皮をモデルとして加齢に伴う皮膚機能の変化や幹細胞の挙動を解析した。放射線やUVBなどDNAダメージを引き起こす環境因子は加齢皮膚同様の機能低下を導くが、若齢マウスにおける恒常性維持過程ではDNAダメージを受けた表皮幹細胞は増殖を停止して分化方向へ運命付けられ、ヘミデスモソーム構成因子の発現低下を導き表皮基底層から離脱する組織再生機構が存在すること明らかとした。ヒト表皮細胞を用いた三次元培養でも同様の結果であったことから、DNAダメージ幹細胞の基底層からの離脱による組織再生は種を超えた普遍的な恒常性維持機構であることを示した。
本研究成果は、加齢性の皮膚機能低下において表皮幹細胞の加齢変化、すなわち幹細胞老化が組織における老化形質出現の中心的な役割を果たすこと、また、幹細胞においてDNA障害を引き起こす種々の環境因子が組織老化促進因子としての重大なリスクファクターとなりうることを示した。本成果に基づく幹細胞老化の抑制を作用点とした、超高齢化社会における抗老化技術の開発へと繋がるものと期待できる。
すべて 2021 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
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