研究課題
若手研究
昨今、いずれの細菌種もタンパク質や脂質、核酸で構成される直径30-500 nmのメンブレンヴェシクル(MV)を産生することが分かってきた。一方で疾患起因性から重要な結核菌のMVには宿主免疫抑制的な作用があると報告されているが、その分子機序は全く解明されていない。結核菌は宿主細胞内で数十年にわたる潜伏を果たす特異な性質を有しているが、その過程にMVが関与している可能性が高い。そこで、本研究は抗酸菌のMV産生制御因子とMV中に存在する宿主免疫抑制因子を同定し結核菌MVの宿主細胞内潜伏に果たす役割の解明を目的とする。
人類最古の感染症の一つである結核は、今なお年間140万の人命を奪い甚大な被害をもたらしている。結核の撲滅を困難にしている一因として、その原因菌であるヒト結核菌の休眠・宿主内潜伏という特異な性質が挙げられる。本研究では、菌が産生する細胞外小胞(メンブレンベシクル:MV)に着目して結核菌の潜伏の分子機序解明を図った。組換え菌作成により、MV産生制御因子の同定を試みた。一方で、MVが宿主免疫に及ぼす影響についても解析を行なった。培養条件の違いによって、MVの免疫刺激活性、免疫原性が大きく変化することが明らかになった。さらには、MVの免疫誘導性を利用した新たな結核ワクチン開発の可能性が示された。
本邦での新規登録結核患者数は減少傾向にあるが、全世界的にはアジア・アフリカ・南米を中心に、結核はいまだに猛威をふるっている。新規抗結核薬の開発などにより結核死亡者数は減少傾向にあるものの、HIV陽性患者における結核死、多剤耐性結核の発生は増加しており、結核の撲滅には依然として解決すべき課題が山積している。ウシ型結核菌弱毒株BCGワクチンは唯一確立された結核予防法であるが、その有効性は小児期に限られること、時にBCG感染症の副作用が出現することなど、問題点も指摘されている。抗酸菌由来の膜小胞の新規結核ワクチンへの応用は、結核制御への新たなアプローチとなりうる。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件)
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