研究課題
若手研究
自閉症の中核症状は社会性障害である。現在、自閉症患者の社会性障害に対する薬剤治療法は存在せず行動療法が治療として行われており、開始年齢が早いほど効果的である。しかしながら、自閉症の社会性障害が行動療法によって、どのようなメカニズムで改善するかは明らかでない。一方で、不安障害児を対象とした研究において行動療法がDNAメチル化に影響することが示された。本研究は単一遺伝子疾患の自閉症モデルマウスの中でも自閉症を高い確率で発症する結節性硬化症(TSC)のモデルマウス(Tsc1+/-マウス)を用いてDNAメチル化に着目することで、自閉症における行動療法の影響および効果を検討する。
本研究は野生型マウスとのペア飼育を自閉スペクトラム症(自閉症)の療育に見立て結節性硬化症(TSC)モデルマウスの自閉症様行動に対するペア飼育の効果を検討し、そのメカニズムとして遺伝子の後天的修飾であるDNAメチル化を解析した。早期から野生型マウスとペア飼育するとTsc1+/-マウスは社会性行動障害が改善した。また遺伝子型やペア飼育によってメチル化をうけるパターンが異なる可能性が示唆された。さらに、社会性行動障害に関連することが示唆される遺伝子を抽出したところ発達やタンパク質結合に関与することが見出された。これらの結果から、自閉症の社会性行動障害の改善にDNAメチル化が寄与することが示唆された。
自閉症の主な症状は、社会性相互交流の障害であり、ヒトとのコミュニケーションや対人相互関係に困難を有するが、根本的な治療法は開発されていない。本研究は野生型マウスとペア飼育することによって、Tsc1+/-マウスの社会性行動障害が改善することを示した。さらに、ペア飼育によってDNAメチル化状態が変化することが見出された。これらのことから自閉症の社会性行動障害の改善にDNAメチル化が寄与することが示唆された。将来的に薬剤との相加・相乗効果を調べることで、標的となる遺伝子が明確になり、より効果的な治療法の開発につながることが期待される。
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https://www.igakuken.or.jp/abuse/works_molecpsy/works2022.html#original