研究実績の概要 |
本研究では,神経変性疾患,特に中枢神経系に異常なタウ蓄積を呈する疾患群-タウオパチーについて,その病変進展(伝播)機序や,神経細胞に加えてグリア細胞の一つであるアストロサイトにも着目し,病態解析を目指した.その結果,PSPやARTAGと同じく4R-tauが蓄積する新規タウオパチー,Globular glial tauopathy(GGT)のsubtype分類に,アストロサイトへのタウ蓄積程度やその蓄積形態が重要であることを見出し論文報告した.このsubtype間では,脳内のタウ蓄積分布および主要臨床症状が異なることが知られていたが,本研究により細胞レベルでの違いを示すことができた.この分子病態機序として,病的タウ蛋白自体の立体構造の違いが推察された.2021年には,共同研究のタウオパチー間でのCryo-EM解析により,それぞれの病的タウ蛋白の立体構造が異なることが示され,タウオパチーの分子病態解明に向けて部分的に寄与することが出来た(Nature, 2021).さらにタウオパチー間におけるタウ蛋白の翻訳後修飾の異同に関しても共同研究から示された.神経変性疾患における伝播病態という点から,タウ蛋白と同じ病的蛋白の一つであるTDP-43蛋白の異常蓄積について,中枢神経(脳-脊髄)内において, 片側性に進展した特徴的なALS複数例を報告し,病的蛋白の進展機序を考察した.稀な遺伝性疾患であるFOPにおけるアストロサイトの特異な変化に関する論文報告,およびMAPT(タウ)遺伝子変異を有するFTLD症例のアストロサイトの変化についても報告した.今回,神経変性疾患,特にタウオパチーのさらなる病態解析に向けて海外留学を計画した.海外留学を通じさらなる研究遂行能力を獲得し,研究再開予定である.
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