研究課題/領域番号 |
19K17117
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 (2023) 奈良県立医科大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
岡村 和哉 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20635734)
|
研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 社会経験 / 内側前頭前皮質 / 発達 / Parvalbmin陽性介在ニューロン / 内側前頭前野 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの脳の発達には社会的経験が必要不可欠である。我々の研究グループは、マウスの同腹仔を離乳後2週間(生後21-35日)のみ隔離し社会的刺激を遮断すると、成体での内側前頭前野第5層の一つのサブタイプの錐体細胞のみで興奮性が低下していることを示した。申請者はこの変化が隔離直後ではみられないことを見出した。視覚野など他の脳領域と同様に社会的隔離モデルマウスにおいても、錐体細胞より早期にParvalbmin陽性介在ニューロン(PV-IN)の変化が生じるという仮説に基づき、生後35日における錐体細胞への抑制性入力の変化やPV-INの機能の変化を明らかにし、変化の発端となる脳の責任部位を提示したい。
|
研究実績の概要 |
当申請研究は、社会経験による内側前頭前皮質の発達がどのような機序で起こるかを検証するものである。申請者ははじめに内側前頭前野第5層において皮質下に投射する錐体細胞(PH-cell)の電気生理学的性質が正常な社会経験によってどのように変化するのかを観察するために、集団飼育群(GH: Group housed)の各発達段階(生後21日、35日、成体)においてWhole-cell patch clamp法を用い検討した。また、社会経験の剥奪によって同細胞がどのように影響を受けるかを検証するため、隔離飼育直後(生後35日)におけるPH cellの電気生理的性質を検証した。一方で、抑制性ニューロンの変化についても検証を行うため、2020年度から2021年度の計画通り、抑制性ニューロンを可視化するためにGAD67-GFPマウスを用いて、同脳領域における介在ニューロンの性質について、Whole-cell patch clamp法を用いて検証を行った。その結果、パルブアルブミン抑制性ニューロンの特定のサブタイプにおいてのみ社会経験の剥奪による影響が早期から現れることを発見し、これらの成果を2023年にCerebral Cortex誌に発表した。 また、同様に内側前頭前皮質における第2/3層における興奮性錐体細胞への隔離飼育直後の影響についてもWhole-cell patch clamp法により検証した。その結果、同細胞の興奮性の低下が早期から出現しており、この結果をFrontiers in Psychiatry誌に投稿し、2024年5月に受理された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外留学により研究を中断していたが、当初の研究計画よりも早い段階で結果を見出すことができ、論文発表できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年にCerebral Cortex誌に発表したパルブアルブミン抑制性ニューロンの特定のサブタイプについては、その分子学的特徴についてはまだ世界的にも報告がない。過去の関連する研究報告からは、この細胞群はチロシン水酸化酵素陽性細胞である可能性が示唆されるが、正常発達における脳機能における役割などを明らかにした報告も存在しない。そこで、今後はこれらを明らかにするために、同細胞群の分子遺伝学的解析や神経細胞活動の測定、社会経験の剥奪による影響などについて検証し、同細胞群の神経活動を操作、もしくは薬理学的介入などにより社会行動が改善されるかを検証する予定である。
|