研究課題
若手研究
細胞の亜致死損傷回復は放射線による損傷からの回復能力であり、放射線が細胞に照射された直後から起こり始め、細胞生存率に大きく影響を及ぼすことが知られている。申請者はこの点に着目して、放射線治療における照射時間と細胞生存率の関係を明らかにし、照射時間の延長が細胞致死効果を低下させることを報告してきた。現在、細胞の亜致死損傷回復などの生物現象を考慮した線量評価システムは未だ存在しない。本研究では、これまでの成果を発展させ、細胞レベルにおける照射時間と亜致死損傷回復の関係を用いることにより、放射線治療計画装置の物理学的線量に照射時間という新たな因子を加味した生物学的線量評価を実現する。
本研究の目的は、細胞の亜致死損傷回復といった生物現象を考慮した放射線治療における線量評価システムの開発である。本研究の目的を解決するため、これまではモンテカルロシミュレーションと数理モデルを組み合わせることで、照射時間と細胞生存率の関係を導出し、放射線治療計画装置の物理線量に照射時間を加味した放射線生物学的線量評価を行い、複数の学会発表や論文を出版してきた。常微分方程式 (ODE: ordinary differential equation) に基いた数理モデルは、単純さと安定性から、腫瘍成長モデルの計算などの用途に広く用いられている。また、腫瘍の放射線治療に対してODEに基づく数理モデルを用いた適切な放射線照射線量や照射間隔の評価も報告されている。そこでODEに基づく数理モデルを開発することで、放射線治療の物理的な線量指標から腫瘍の反応性などの放射線生物学的な計算を行うことが可能となり、放射線治療の腫瘍体積への影響を評価することが可能になると考えた。2022年度は、新たにODEに基づいた数理モデルを開発し、先行研究による腫瘍細胞の測定データを用いることで数理モデルの精度の検証を行い、放射線治療における様々な条件 (放射線照射中のエラー、照射時間の延長など) が与える放射線生物学的影響を開発した数理モデルを用いて評価を行い、研究論文を2編投稿した (1編 出版済み、1編 Major Revision)。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の目的を解決するために新たなアプローチを試み、新たに研究論文を2編投稿できたため
2023年度は現在Major Revisionの1編の論文の出版を目指すとともに、より堅牢な放射線生物学的モデル構築ののための研究を続行する予定である。
すべて 2023 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 2件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (39件) (うち国際学会 3件)
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